天に代わりて不義を討つ

歴史修正主義に反対します。難しいことをやさしく、わかっていると思うことを深く追求して書きます。議論を通じ、対話を通じて真実を求めます。

阿比留記者がつかこうへい氏を出汁にして慰安婦否定論を書いた

阿比留瑠比記者がつかこうへいさんを出汁にした慰安婦否定論記事を書いている。在日韓国人であり、著名な劇作家である、つかさんを利用すれば、説得性のある否定論を書けると踏んでのことであろうが、つかさん、そのひとの慰安婦に対する認識が、慰安婦の問題を論じる座標軸の原点にできるかと言えばとそうとは限らない。


 

 当時も慰安婦問題が日韓間で政治問題化していた。そんな中でつか氏は『娘に語る祖国 満州駅伝-従軍慰安婦編』という著書を書くため、元日本軍兵士や慰安所関係者らへの取材を重ねたという。
  「僕は『従軍』という言葉から、鎖につながれたり殴られたり蹴られたりして犯される奴隷的な存在と思っていたけど、実態は違った。将校に恋をしてお金を貢 いだり、休日に一緒に映画や喫茶店に行ったりという人間的な付き合いもあった。不勉強だったが、僕はマスコミで独り歩きしているイメージに洗脳されてい た」

 「悲惨さを調べようと思っていたら、思惑が外れてバツが悪かったが、慰安婦と日本兵の恋はもちろん、心中もあった。僕は『従軍慰安婦』という言葉が戦後に作られたことや、慰安婦の主流が日本人だったことも知らなかった」



つかさんが元日本軍兵士、「慰安所関係者」に取材したというのは事実だろうか。
元日本軍兵士というのは1990年代当時はまだ多く生存していただろうが、証言してくれるひとを見つけるというのはかなり難しい。
私ごとだが親戚などに慰安婦のことを尋ねるというのはちょっと考えられない。南京事件の当事者に尋ねるよりももっと難しい。わかるだろう。
「慰安所関係者」というのはもしかして、慰安所の経営者、いわゆる楼主のことか。
慰安所を使用した兵士なら実は掃いて捨てるほどいる。しかし、慰安所の経営者はものすごく少ないはずだ。
それに慰安所のユーザーである兵士はまだしも一般的に罪はない。しかし、楼主と言えばいわゆる「強制連行」の主犯と目される。犯罪者として見られる恐れは高い。
そんな楼主、あるいはそれに連なる人物がおいそれと取材に応じてくれるか。何よりこれだけ証言の類はあるけれど慰安所の楼主の証言は滅多にない。*1
つかさんが取材したというのは単にさまざまな文献を当たっただけではないのか。

ま あ、何人かの元兵士からなら、運よく証言を得られたかも知れない。しかし、それは慰安婦に親切にしていたとか好意を受けていたとかの兵士であり、脛に傷を 持つような経験を持つ元兵士ではないだろう。罪の意識が少しでもあったなら、自分に都合の悪いことだけは絶対に伏せておく。
もうひとつ、慰安婦の ユーザー、ホルダーに取材したとしても、当の慰安婦本人から取材しなければ慰安婦の本当の姿は浮かび上がらない。要するに犯罪者と共犯者、(と言って悪け れば見てみぬ振りを決め込んだ目撃者)にだけ事情を聞いて被害者から聴き取りをしない犯罪捜査のようなものだ。

まあ、阿比留記者も故人を出汁にして好きなことを書いたものだ。


1992年に従軍慰安婦として歴史問題、女性の人権問題として注目をあびる以前においても慰安婦の 話題はあった。そのイメージは兵士にほしいままにされる気の毒な女性たちというものであり、戦後の映画や、通俗小説で繰り返し描かれていたイメージであっ た。日本では「奴隷」という言葉の使用例は欧米に比して限られている。日本人はアメリカ黒人奴隷などのイメージしか持っていないから「鎖につながれた」と いうイメージにつながりやすいのだろうが、慰安婦ではさすがにそれはない。しかし、「殴られたり蹴られたりして犯される奴隷的な存在」は慰安婦の証言に頻 繁に出てくる。反面、「将校に恋をして お金を貢いだり、休日に一緒に映画や喫茶店に行ったりという人間的な付き合い」の状況もあるにはあった。慰安婦と いえども10万人も20万人もいたのであ ればさまざまな境遇がある。兵士だって玉砕の激戦もあれば、飢餓戦線をさまよう生き地獄もある。あるいは孤島に配置されたが、米軍にもパッシングされると いう強運の部隊もあった。映画や喫茶店というのがどれだけ恵まれた境遇か、全体を通して感じてほしいものだ。さまざまな証言を通読すれば、限られたケース であるがゆえにかえって記録として残ったことがわかっただろう。


慰 安所従業婦は軍における正式名称であった。これを短くすれば慰安婦になる。また、「慰安婦」という、性労働の強制をぼかした名称はあったし、軍に付き従う形で性労働を強制されていたことも事実。実態を 示す名前を付けることが憚られていた存在であるがゆえに、戦後になって実態に近づける呼び方が試みられたのである。有名にしたのは千田夏光氏の著作 であったが、それ以前にも「従軍慰安婦」と呼ぶ人があったのは図らずも、その実態・本質についての認識が一致していたことの表れである。

 現代史家の秦郁彦氏の研究によると、慰安婦の4割は日本人であり、朝鮮半島出身者はその約半数だった。この事実についても、ほとんどのマスコミや左派系の政治家らは気付かないか無視している。

 筆者は12年10月に当時、元慰安婦に一時金(償い金)を支給するアジア女性基金の理事長だった村山富市元首相にインタビューし、こう問いかけたことがある。

 「慰安婦の多くが日本人だったことはどう考えるのか。今後は、日本人も一時金の支給対象とするつもりはあるのか」

 すると、村山氏は「うっ」と言葉に詰まったきり、何も答えられなかった。同席した基金理事が、慌てた様子で「今の質問はなかったことに」と取り繕っていた。



この段落はつかさんの認識ではなく、阿比留記者による秦氏の説の抽出と阿比留記者の認識である。
朝 鮮人慰安婦より日本人慰安婦が多かったという事実はない。元兵士による証言、性病調査統計からの類推によって少なくとも朝鮮人は日本人の倍以上だったこと が推定される。日本人の方が多かったというのは右翼・歴史修正主義者に限られている。つか氏の慰安婦に対する情報収集はかなり不正確なものだったようだ。

日本人慰安婦に対する補償は日本人の 各種戦争被害者に対する公的補償制度との整合上でどうするかはまだ決まっていなかった。また、日本人慰安婦として名乗りをあげて補償を要求するひとがひと りもいなかった。それが日本人慰安婦に対する補償について即答できなかった理由だろうと推測される。村山氏らの反応が阿比留記者の描くようなものであったかどうか、村山氏サイドの証言がない以上不明である。

 話を戻すと、つか氏は「営業行為の側面が大きくても、人間の尊厳の問題なのだから、元慰安婦には何らかの誠意を見せ続けるべきだ」とも語ったが、歴史の見方はあくまで公正で透徹していた。
  「常識的に考えて、いくら戦中でも、慰安婦を殴ったり蹴ったりしながら引き連れていくようなやり方では、軍隊は機能しない。大東亜共栄圏を作ろうとしてい たのだから、業者と通じてはいても、自分で住民から一番嫌われる行為であるあこぎな強制連行はしていないと思う。マスコミの多くは強制連行にしたがってい るようだけど」



つかさんの、営業的側面が大きかったという認識は誤りであるが、人間の尊厳の問題として捕らえていたことはよくわかる。
歴 史学者・研究者はそもそも「強制があった」ということを主張しており、強制とは強制連行と強制使役(性行為の強制)のことであった。そのうち強制連行とい うことだけを取り出して問題にしたのは右翼・歴史修正主義者の側であった。強制連行は騙したり、脅したりして連れていくことを含んでいる。これを銃剣を突 きつけて官憲や軍人が連れていくことに限ると思わせ たのが右翼と右翼のマスコミであった。約260万人の兵士に100対1とか150対1の割合を目標として慰安婦を供給しようとすれば、できるだけスムース に波風が立たな いように連れて行くことを心がけるだろう。それくらいは歴史学者、研究者もお見通しである。慰安婦の 徴募においてはまず、甘言によって騙して連れていく、 業者の手中に 落ちたところで、すでに逃げられ ないようにする、逃げようとしても逃げられないようにしてある。騒げば脅される。慰安所では暴行・脅迫によって性行為を強要された。はじめからそう主張し ているのである。つかさんは右翼のマスコミに騙されたのである。

 そして最後につか氏が述べた次の言葉を、筆者は今こそかみしめたいと思う。

 「人間の業(ごう)というか、こういう難しい問題は、自分の娘に語るような優しい口調で一つひとつ説いていかなければ伝えられない。人は、人を恨むために生まれてきたのではない。歴史は優しい穏やかな目で見るべきではないか」
 つか氏のような視座が、もっと世界に広がることを願う。


歴 史にはひどい話がいくらでもある。差別も圧制も殺戮も強姦もある。それも人間の業から来ているのは確かだ。歴史にもてあそばれた個人はひとを傷つける場合 もあるし傷つけられる場合もある。優しい穏やかな目で見るということは傷つけられたひとたちの目から歴史を見るということではないか。それはなにも傷つけ たひとたちに対する復讐ではなく、傷つけた側に立ったひとが考えを改める機会を与えることではないだろうか。

つかさんの言葉はよく心に響 く言葉である。しかし、阿比留記者が「つか氏のような視座が、もっと世界に広がることを願う」などと言うのを聞いても阿比留記者の今までの主張とどう関る のかわからない。傷つけた側を優しい穏やかな目で見よという主張に持っていこうとしているのであれば納得できる。さすがに、つかこうへい氏はそんなことは 言わない。

(「娘に語る祖国 「満州駅伝」従軍慰安婦編」P149-153)
今日も満州に愛の壊れる時がきた
「鬼塚さん独特の、よく通る、ドスの利いた声が響きました。
『池田、何をしてるんだ』
『・・・・』
『脱走する気か!』
スンジャも私も何も言えず、立ち尽くしていると、
『何のためにオレが駅伝大会を開いてやってると思ってんだ。慰安婦が脱走なんかせんでいいようにやっとるんだ。その気持ちをどうしてわからんのだ』
 周りを兵隊たちに取り囲まれ、私たちは縛られ、木にくくりつけられました。
『知ってるな、池田。脱走は銃殺だと』
『はい』
『い いか、池田、じゃあこういうことにしてくれ。おまえはこの広い満州平原の中で駅伝の最中に便所に行きたくなった。そしてこいつが水を飲みに来た。そして二 人で休んでいるところをたまたま、脱走したと思われて誤って銃殺されそうになっているってことにな。それでことを穏便に運んでくれ』
『しかし上等兵殿』
『オレがいつも歌ってるだろう。
“今日も満州平原に愛の壊れる時がきた。
 見よ、あの真っ赤に沈みゆく美しい夕陽を!!
 あの夕陽に白く縁取りをすれば、日の丸の形になる!!”
 この詩はいい。
 ここんところを汲み取ったならば何か言えるだろう。
 大体なあ、オレたちが何十回も何百回も抱いた女と何してんだ!』
『はっ』
『わからんのか!第一、兵隊が朝鮮人に、しかも慰安婦なんかと恋に落ちて脱走したなんてことになったら、大日本帝国が根底から揺らぐ!』
 そう言ってガンガン殴られました。
『オレは常々言っているだろう。愛、その次には“に”から始まるあの言葉。“愛憎し”だよ“愛憎し”。
 なあ。その言葉を刻みつけてもう一度何かを言ってみろ』
『上等兵殿』
『池 田、いいか。嫌がる女を無理矢理連行し、抵抗したら傷つけ殺し、病気持ちにさせておきながら変な情けをかけた日には、大日本帝国は根底から揺らぐ。この戦 争が終わったあと、“あれは狂っていたんだ、だからあのことは仕方なかった”そう言い切らねばならんのだ。それにはな、愛だ恋だを芽生えさすだけの理性な どあってはいけないんだ。でなければ、大日本帝国が根底から揺らぐ!!
 そこんとこを汲んでもう一度何かを言ってみろ!!』
『上等兵殿。こいつは可哀相な女であります。朝鮮から慰安婦として連れてこられて、日に何十人も客を取らされて、この女は可哀相な女であります。どうか助けてやってください』
『それは分かってる』
『好きになってしまったのであります。誘ったのは自分です。こいつは悪くありません』
 その時、スンジャが前に身を乗り出し、はがい締めにする兵たちを振り切るようにしながら叫んでくれたのです。
『違う。この人悪くない。朝鮮から連れてこられて、何人も男取らされて、私たちが何した。この人だけが、人間らしく扱ってくれた。自分の時は休めって言ってくれた。この人が死ぬなら自分も死ぬ』
『よし、そうか。撃て!!』
 そう言って、右手を高々と振り上げようとした、ちょうどその瞬間でした。サイレンが鳴り響き玉音放送が流れたのです」
玉音放送?終戦ということですか」
「そうです。なんか大騒ぎになっちゃって、そのなかで私はへたりこむようにして地面にしゃがんでいました。ほっとするというか何というか、とにかくただ座り込んでいました」

 

つ かさんは俳優を舞台の上でとことん追い込みながら、俳優がつかさんに対して生身の反応をしていく過程を戯曲に取り込むというユニーク作劇法を駆使してい る。つかさんの作劇法には在日韓国人として生きてきた中で彼の精神に深く織りたたまれた強要と反抗、愛と憎しみが出演者にも降り注がれる。この短い抜書き でも上等兵が池田と慰安婦を追い込みながら、出てくるセリフを待つところにそれが見て取れる。それで、私の印象だが、日本軍が慰安婦と兵士を追い詰めてい く状況、男女の普遍的な愛がきれいに描かれている。つかさんはあまり正確ではない情報も仕入れたと指摘したが、つかはそのような表層の情報によってではな く、慰安婦の置かれた本質的な状況を描きだしたと言える。

*1:従軍慰安婦と15年戦争<ビルマ慰安所経営者の証言>西野留美子(明石書店)が私が知る1例

秦郁彦氏の慰安婦推定方法について

 「荻上チキ・Session-22」の「歴史学の第一人者と考える『慰安婦問題』」を聴く―吉見・秦対談を聞いたとき、秦氏が「私は慰安婦の生還数を計算したことがあるんですよ」と自慢そうに言うのを聞いてあきれました。

秦氏の歴史上の数字の扱いがいい加減なのは南京事件の研究を通じてよく知っています。一方、永井和先生には秦氏の慰安婦総数についての計算を批判した投稿があります。批判は正鵠を得ているのですが、正直言って長い。長すぎてなかなか頭の中に入ってきません。そこで自分の勉強のためによく読んで私が理解したところを書きし直してみました。


 秦氏はその著書『慰安婦と戦場の性』第12章で慰安婦数を推計しています。「狭義の慰安婦は多めに見ても二万人前後であろう。広義をとっても二万数千人というところか」との結論を下しています。

 秦氏が用いた推計法は二つで、ひとつは陸軍の慰安施設設置数から推計するものです。もうひとつは慰安婦1人あたりの平均兵員数(これを秦氏は「適正比率」と呼んでいます)で、兵員総数を割り算して求めるものです。ここでは後者の「適正比率」推計法を批判します。

こ の平均兵員数というものを軍が正式に決めていたりするのであれば、ある程度の目安として使えるでしょう。しかし、個々の部隊ではその目安を述べている資料 もないではないのだが、多くは予定数で確実なものではないので、次善の推定法として、内地の平時における売春動態統計から推定しています。これもまた、完 備した統計と正しい論理によって推定されるのであればひとつの目安として使えるでしょう。

 秦氏は「適正比率」を慰安婦1人あたり150人とします。この「適正比率」=150人という推計は正しい論理手続きが踏まれていません。ふたつの大きな誤りがあり、その結果導き出された数値の妥当性はまったくありません。そこのところを以下に説明します。

 問題の推計法は『慰安婦と戦場の性』(新潮社、1999年)406ページに書かれています。

>平時の公娼統計(3000万の遊客に三業の婦女約20万で150対1)を参考にしつつ計算すると、250万人÷150人=1.6万人となる。(漢数字は算用数字になおして引用した)

この1.6万人に慰安婦の交代を考慮に入れて求めた結果、慰安婦数は「多めに見ても二万人前後」という結論を下しています。交代というのは慰安婦が前借金を返済して帰郷するとか、病死、戦死などに至って不足数を新たな慰安婦が埋めるという予測値です。

秦氏の推計のサマリー

 日本の内地の公娼統計に芸妓・酌婦・娼妓とよばれる接客婦(これが「三業の婦女」です)が20万人いた。1937年にその接客サービスの顧客(「遊 客」)は3000万人いた。よって、接客婦1人あたりの「遊客」の数は150人となる。日本軍の将兵数と慰安婦の比率もこれと同じ比率だという仮定に立っ て、この比率を1944年11月時点の外地所在の陸海軍軍人軍属総数250万人(これは秦氏の独自の推計数)を母数として、それに対応する慰安婦数を求め ると1.6万人となる。




 しかし、以下に述べるように、秦氏の推計には二つの大きなの誤りがあります。第一の誤りは「3000万の遊客」は「三業の婦女約20万」の利用客ではなく、娼妓の利用客です。

  「3000万の遊客」と「三業の婦女約20万」という数値はいずれも、秦氏の『慰安婦と戦場の性』の30頁の「戦前期の内地公娼関係統計」という表にあり ます。脚注からこの数値は、『昭和国勢総覧』第3巻の388、389頁にある二つの表「警察取締営業の状況(2)」(大正13年~昭和16年)(これをA 表とする)と「興業と遊郭(2)」(大正15年~昭和16年)(これをB表とする)を元にしていることがわかります。

 ところが、A表に は、「芸妓」「酌婦」「女給」の人数がありますが、「娼妓」と「遊客」の人数はありません。「娼妓」と「遊客」の人数は、B表に記されています。したがっ てB表の遊客は娼妓を利用した人数です。ところが秦氏はA表とB表を合成したときに、「芸妓」「酌婦」「女給」と「娼妓」の人数を三業の婦女20万とし て、その利用者である遊客の数は娼妓の利用者数を当てたのです。

 したがって「(3000万の遊客に三業の婦女約20万で150対1)」という結論は無意味です。もし、推計の論理に他の誤りがなければ、「3000万の遊客」を「4.7万人の娼妓」で割った数値で(約638)を元に計算すれば一応の数字は出ます。

 しかし、「638対1」で計算すれば慰安婦数は、250万人/638=3918人となります。250万人の将兵の性の相手をわずか4000人足らずの娼妓でまかなうことができるか、誰が考えてもおかしな結論です。これは第二の誤りのせいです。

 第二の誤りは内地遊客数(延人数)を実人数のように考えたことです。遊客数というのは娼妓の性サービスを求めて貸し座敷を訪れた男性の1年間の延人数です。これを娼妓の数で割って出るのは、娼妓一人当たりの年間接客数に過ぎません。
 
これを数式にします。
遊客数=Y
婦女数=F
婦女一人当たりの年間接客数=R
Y÷F=R という関係式が成り立ちます。
もし、YとRが既知ならば、F=Y÷RでFの値を求めることは可能です。

秦氏の推計法は内地の売春者一人当たりの年間利用客数(R)と外地慰安婦の年間利用客数が同じと仮定して計算するわけです。つまり外地慰安婦一人当たりの年間利用客数もR。この仮定自体は棚上げしておきます。

秦氏は外地における日本兵実数(J)をいきなりRで割って慰安婦数(I)を出そうとしました。
すなわち、「J÷R=I」としたのです。

し かし、(J)は外地において内地の遊客数(Y)に相当する数字ではありません。この数字は兵士一人当たり年間慰安婦利用回数(K)がわからないといけませ ん。Kがわかってはじめて日本軍兵士年間慰安婦延利用回数(=K×J)がわかります。これが内地の遊客数(Y)に相当する数字です。慰安婦実数(I)とし て関係式を一応作れば

K×J÷R=I
よって、
J÷R=I/K
慰安婦実数を兵士一人当たり年間慰安婦利用回数で割った数(?)。この意味を説明することができるひとはいないでしょう。意味のない数字です。

もしも、兵士一人当たり年間慰安婦利用回数(K)が1と仮定すれば、
J÷R=Iとなって見事に慰安婦数を推定できます。もし、慰安婦数二万人が正しければ、K=1が秦氏の推計の結論になってしまう模様ですが、まさか、血気盛んな年齢の男子に1回だけ女をあてがっておけば、強姦がなくなると軍が考えたわけはないでしょう。

さ て、先ほど棚上げしておいた、秦氏の仮定の内地の娼妓一人当たりの年間接客数(R)と外地慰安婦の年間接客数が同じという仮定はそもそも正当でしょうか。 正しく計算したときの娼妓一人当たりの年間接客数638人を1日当たりにすると1.7人になります。慰安婦の証言でも兵士の証言でも慰安婦は1日平均10-20人 くらいの接客をこなしていたようです。平時の内地での接客はひとりに十分時間をかけないと満足をしてもらえません。一方戦地ではあわただしくことをすまし て数をこなさなければなりません。そういう状況の違いは一切考慮されていないようです。


  秦氏はこういう推定には向いていないと思われます。あちこち数字を弄り回しては、自分の予断に合わなかったら、その推定法の前提を捨てる。前提はとっかえ ひっかえして自分の予断に合う数字が出たところで満足してやめる。だいたいそういうやり方だと考えて間違いがないでしょう。

 それで、慰安婦の実数はどの数値が正しいのか。秦氏の『慰安婦と戦場の性』第12章403ページには「慰安婦の数的規模に関する諸説」という表があり、吉見義明が5万(下限)-20万(上限)、秦郁彦が6万-9万、林博史数万-10数万と推定しており、中国、韓国の研究者が30万、40万の説、そして最低が板倉由明の3万となっています。

 秦氏は従来の自説を本文では下方修正しました。実は南京事件の虐殺者数の算定のときに秦氏はなんの注記もしないまま、板倉の推定を下敷きにしてそれを適当に変えています。板倉はいわゆる「適正比率」を150対1で計算し、慰安婦数3万と算出しています。秦氏の上記の不思議な推計方法は案外、これに合わそうと試算したものではないでしょうか。

 これと同様の表はネットでは 慰安婦問題とアジア女性基金 慰安所と慰安婦の数 で見ることができます。私はこれらの推定の原資料に当たるほど詳しくないので、真ん中のあたりかなと思っています。

橋下ツイスト(4)

 - 2013年06月20日(木)のツイート
橋下はなおも破綻した議論を蒸し返しては、参院選挙で慰安婦問題での失敗を糊塗しようとしている。同じことの繰り返しでこちらもうんざりするが、書かざるを得ない。



毎 日新聞は新聞の体をなしていない。完全に冷静さを失っている。僕が慰安婦についての事実が明確になっていないと言っているのは、国家の意思として組織的に 女性を拉致・人身売買したかどうかの事実だ。この事実があったとして(1)世界からは慰安婦ホロコーストや日系人強制収容所と同じ扱いになっている

僕は各施設で慰安婦の方が意に反して就業したことを否定していない。ただそれが国家の意思としての拉致・人身売買であったかどうかは別だ。(2)施設で意に反して就業したということは他国の軍も利用した現地民間業者の施設でもある話だ。 (3)日本の特殊性は国家の意思としての拉致・人身売買にあるとされている

毎日新聞は強制という言葉で全てを語るからおかしな話になる。僕は全ての事実を否定しているわけではない。僕が否定しているのは「国家の意思としての拉致・人身売買」だ。(4)慰安婦の方が意に反して就業していた事実は否定していない。毎日は完全に誤報だ

(1)「世界」が慰安婦問題を、ホロコーストと同じとか、日系人強制収用所と同じに扱っているとかのソースは見かけない。それぞれ、独特の背景と広がりを持つ事件であって、共 通した部分もあれば違う部分も多い。だいたい、ホロコーストも日系人強制収用所も「女性を拉致・人身売買」しているわけではない。橋下のアジ・デマで間違 いない。

(2)「意に反して就業した」ということは橋下によれば、
>しかし本人の意思に反してというのは法律用語でも二つの意味があって、本人が不本意に感じているという意味と、第三者から強制的にやらされたということの意味が2つある。裁判なら、どっちかを確定するわけです。(2012年8月24日赤旗記者インタビューより)
ということだった。慰安婦の場合、慰安所に拘束されているから当然、後者の意味なのだが、「他国の軍も利用した現地民間業者の施設でもある話だ」ということなら、その証拠を提示してみろ。

(3) 「日本の特殊性は国家の意思としての拉致・人身売買にあるとされている」、これも誰が、どこの国がそんな話をしたんだ、という話。日本の慰安婦制度は一言 で言えば性奴隷制度として世界から非難されている。これが事実だ。「他国の軍も利用した現地民間業者の施設」が性奴隷制度として非難されたことがない。も し、そのような施設があったとすれば、世界中で問題になったはずである。橋下はそのような施設を他国の軍が利用したという証拠を示 せ。もし、それが正しければ隠されていた性暴力を告発した政治家として世界から尊敬を受けるはずだ。


(4)「慰安婦の方が意に反して就業していた事実は(僕は)否定していない」という話だが、橋下は単に不本意だったとでも言いたいのだろう。これは元慰安婦の証言で否定される。これは完全に強制であった。

河野談話ではこの部分は「また、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった」、「当時の朝鮮半島は我が国の統治下にあり、その募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた。 いずれにしても、本件は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である」と表現されている。


 

 

保守主義と歴史認識:/4 否定できぬ慰安婦強制 石原信雄氏に聞く
毎日新聞 2013年06月19日 東京朝刊

 --日本維新の会の橋下徹共同代表の従軍慰安婦をめぐる発言が物議を醸しました。

 ◆ 慰安婦を募集した際の強制性について政府はあいまいだと橋下氏は批判しているが、河野談話の取りまとめに関わった人間からすると強制性は認めている。調査 員を派遣して、慰安婦とされた人たちで政治活動をしていない人を選び、中立的な雰囲気の下で話を聞いた結果、明らかに本人の意思に反するものがあったこと は否定できないという心証を我々は得た。

 --通達などの物証は出ませんでした。

 ◆文献その他からは、日本政府なり軍 部が強制的に慰安婦を募集せよといったものはない。焼いてしまったという人がいるが、そうじゃないと思う。当時の軍だって、本人の意に反してでも集めろな んて文書を出すはずがない。慰安婦の募集は軍部が直接やったわけではない。業者に委託し委託料を払った。業者がノルマを達成するために、朝鮮総督府の巡査 などが業者の依頼を受けて強引に応募させた。工場の挺身(ていしん)隊に行くと言われて行ったら、慰安所で帰してもらえず、だまされたという人もいた。

 --物証がないのに強制性を認定したことに批判もあります。

 ◆当事者のヒアリングで認定したことには、当時から間違いだという批判はあった。今でもある。しかし、宮沢内閣としては、戦時中の不幸な出来事、そうした負の遺産は決着をつけて、日韓の未来志向の関係にもっていきたいと考えた。

 --慰安婦問題や太平洋戦争を正当化しようとの動きはどう見ていますか。

 ◆ 戦後、日本は西欧型民主主義を受け入れた。自由社会のパートナーとしてアメリカとの関係を良好にしていこうというのが代々の政権のスタンスだ。これに対し て、石原慎太郎(日本維新の会共同代表)さんたちは、アメリカは日本を占領政策の延長線で考えているととらえ、日本民族の主体性、独自性をもっと強調しろ というようなことを言うもんだから、アメリカからすれば日米の協力体制を見直すという動きに取れるのだろう。

 --安倍晋三首相と石原共同代表に共通点はありませんか。

 ◆ 安倍首相は日本の政治の最高責任者という立場から、日米協力体制を変えるとか、疑問視する立場はとっていないのではないか。安倍さんは首相になる前は、や やタカ派的な発言をしていたようだが、首相になってからは用心深く発言し行動している。私は村山富市元首相を尊敬している。日米安保破棄が意見だったが、 首相になって軌道修正した。首相とはそういうものだと思う。【聞き手・高塚保】=つづく

 


6 月19日の毎日5面、河野談話の作成事務方であった石原信雄氏へのインタビューも、意図的な見出し。「否定できぬ慰安婦強制」これは完全な論点ずらしだ。 僕が問題としているのは慰安婦の方が意に反して就業したかどうかではない。それが「国家の意思として拉致・人身売買」によるのかどうかだ。(以下、6通のツイッターは繰り返しのみなので省略。)

石原氏の回答は論点ずらしなどではない。慰安婦に対する強制性は(1)いわゆる強制連行と(2)慰安所における性労働の強制がある。「国家の意思として拉致・人身売買」というのは橋下が慰安婦否定のために作った新たな枠組みである。このことは前にも指摘した。安倍が「『人さらいのように、人の家に入っていってさらってきて、いわば慰安婦にしてしまったという』強制連行」という枠組みで慰安婦を否定したがその代わりに立てたのだ。

韓 国サイドへの政治的配慮だったのだろう。しかし歴史的事実について政治的配慮は絶対不可だ。歴史的事実の認定は正確に行いながら、それに対する対処方法は 政治的に判断すれば良い。石原信雄氏が認定した事実を河野談話では正確に表現していない。河野談話は事実があいまいだ。

石原信雄氏は、慰安婦の方の意に反した就業を認めた。しかし河野談話はその事実を超えて、国家の意思としての拉致・人身売買まで認めたような表現になっている。ここが世界に誤解を招いている元凶だ。同じく19日の読売新聞4面は、このあたりのことを正確に論じている。

河野談話は「国家の意思としての拉致・人身売買」などについては言及した事実がない。これも橋下がそのように言いつのるはアジ・デマである。

国 連拷問禁止委員会は、僕の発言を否定するよう日本政府に勧告した。ところが日本政府は法的な義務はないと勧告に応じない。結局僕の発言が間違っているのか 正しいのか、日本政府な何も答えなない戦術に出た。結局、事実を明確にしないまま、世界各国が誤解していることを容認しようとしている。

慰 安婦の利用を正当化すれば、それは今の国際社会では通用しない。しかし事実誤認があるならそれはきちんと正すべきだ。当初は批判を受け、軋轢が生じるだろ う。これまで日本は黙ったままで異議を出さなかったのだから。しかし言うべきことは言うべきだ。批判を恐れて黙ることも国際社会では通用しない

19 日読売4面は問題の本質が分かる。同日毎日5面は誤解がさらに広がる。毎日新聞よ、石原信雄氏はインタビューにおいて「国家の意思としての拉致・人身売 買」までは認めていない。僕の問題提起に真正面から答えるべきだ。僕は慰安婦の方の意に反した就業は否定してない。新聞社の力量の違いが明確だ

国 家の責任は政治責任であり、結果責任である。当時の朝鮮籍、台湾籍を含む日本国民に対し、あるいは中国、インドネシア、フィリピン、マレーシア、タイ、ビ ルマ、メラネシア、オランダ人たちに意に反した性労働を強制した事実がある。国家としての意思の証明があろうが、なかろうが、国家がしたことで多数の女性 の人権を踏みにじったのは明らかである。日本政府は彼女らに対して真摯な謝罪と、応分の補償を行なうべきだ。そのことよりほかに国際社会における信用失墜 を回復する途はない。

わさび茶漬けさんとの対話(下)


それから、わさぴ茶漬けさんはこれから戦時の強姦をなくすためになにか特別にすることがあるとお考えでしょうか。

ここまで、議論しておいて、お恥ずかしいのですが、具体策の案が思い浮かびません。
まず絶対条件として、戦争をなくすということです。そして、絶対に好ましくはありませんが戦争になった場合、「人類が何世紀もかかって、作り上げてきた現在のモラル、価値観、そして(女性の)人権」を、信じることしかないような気がします。
しかし、戦時において、むごい友人の死を見たり、自分の死への恐怖で、道徳観や理性がマヒしてしまう中、どうなってしまうのか、僕は兵士ではないので、わからない部分であります。

これは、”戦場の性は一般的、慰安所も売春も強姦も同じ”と言わんばかりの橋下の議論は正しいのか、という問いです。具体的な方策もない、被害者も声を挙げていない戦場の性暴力をどうやって予防するというのか、一度、橋下に聞いてみたいものです。

これはわさぴ茶漬けさんに問いただす意味ではなく、一緒に考えてみようという意味です。私なりの考えを述べて見ます。戦争をなくす、というのが根本的な解決であることはご指摘の通りで 言うまでもありませんが、問題はあくまでも戦場の強姦をなくすにはどうしたらいいか、戦争が前提です。いまもって戦争を根絶できない、できていない状況ではこういう問いも必要です。まず、戦場での強姦がどういうときに起こるか、考察してみます。

第一は極度の緊張がもたらす性欲の解放です。
戦 争に限らず、こういう現象があります。司法試験のときには男子便所でマスターベーションのあとが無数に見られるという話を聞いたことがあります。男性とい うのは極度の緊張状態から解放されたとき無性に性欲を満たしたくなるのです。ベルリン陥落時のソ連兵、南京陥落時の日本兵がその例です。

第二は人種差別と相手国に対する徹底的な憎悪と侮蔑です。強姦は相手の国民に対する懲罰としての意味を持つのです。朝鮮戦争で北朝鮮に侵攻した韓国軍が北朝鮮の女性を強姦したり、慰安婦にしてしまったという例もその一例です。

現代の日本の風潮で私が危機感を持つのは、韓国・朝鮮・中国に対して極度の憎悪を振りまいて朝鮮人は国に帰れとか、朝鮮人を殺せとかわめくひとたちです。こういう思想・感情を持つものが、もし戦場に出れば強姦に罪悪感を感じないのは明らかでしょう。

第三は占領国軍兵士が相手国民に対して圧倒的な権力を手にして、強姦を抑制するべき憲兵がまったく働かないときです。

占 領軍兵士はそもそも武器を持ち、非占領国の市民は武器を持ちませんから、占領国軍兵士は圧倒的パワーを持っています。しかし、憲兵組織がしっかりしていれ ば、占領国軍兵士のパワーは相対的なものになります。また、占領国軍兵士と非占領国市民の精神的文化的地位の力関係というものが結構影響します。ベルリン になだれ込んだソ連軍兵士は最初のうち大変な数の強姦を行いますが、そのうち、強姦絶対禁止の命令が出て違反者は公開銃殺されました。これをきっかけにし て強姦は激減します。その代わりソ連兵はドイツ娘と仲良くするようになりました。おそらく中央アジアあたりから連れて来られた水道の蛇口さえ見たこともな いソ連兵にとって身なりもリッチで自分たちよりはるかに洗練されたドイツ娘に対しては高圧的に振舞うのが憚られたのです。そのため自分が持っている物資を えさにドイツ娘に近づき、情婦として扱うようになったので、暴力的な強姦は形を変えて言ったのです。

これとは逆に南京の日本兵は当時の日 本国内の新聞によって中国人が文化的にも低く、劣っていて性質も悪いと信じ込んでいましたから、ソ連兵のような事情で強姦が終息することはなかったので す。また、慰安所を南京に作れば強姦がなくなるだろうと慰安所を作ったのですが、市中での強姦はなくなりませんでした。

長くなりました が、強姦は戦争がもたらすとは言え、その国の人権・民主主義の程度が高いと少なくとも、大量の強姦事件はなくなります。ベルリンにおけるソ連兵・フランス 軍セネガル兵部隊は強姦が多く、米英軍兵士は強姦はほとんどありません。南京の日本兵もその例に漏れません。

強姦を減らそうと考えるので はなく、人権、女性の権利をきちんと保護し育てる国にすることが何より大切なのです。日本がもし戦争に巻き込まれたら、というような前提を立ててそのとき の強姦はどうするか、というようなことを考えるのはばかばかしいのですが、慰安婦問題が正しく解決できるような国にすることが大切です。

最後に、タラリさんに2つ質問です。

橋下氏の主張。
日韓基本条約は第2条に「両国間の財産、請求権一切の完全かつ最終的な解決」とある。元慰安婦の方には、政府としても反省謝罪するべきだが、国際法上、政府が直接慰安婦の方に賠償することはできない。(そのためアジア女性基金を使った)。

国際法に「政府が個人に賠償することはできない」などという条文はありません。日本政府が国と国の取り決めで賠償は済んだと言っているだけで、しようと思 えばできます。なるからだ、という簡単な理屈です。戦争や植民地による被害は国と国の間のことだけにとどまりません。本当に必要なのはひどい目にあった個 人に対する補償です。

政府や橋下ははじめから慰安婦に謝罪する気がないので、あれこれと理屈をこねているだけです。

そこで、元慰安婦の方に政府が直接賠償金を渡す場合、第3条に「この協定の解釈及び実施に関する両締約国間の紛争は、外交上の経路を通じて解決するものとする」というのに基づき、この外交上の経路というのに「国際司法裁判所」を使うべきだ。

この主張に関して、どう思われますか?

も ともと慰安婦に対する補償は韓国政府が政府にくれ、と言っているのではありません。韓国政府が慰安婦に対して補償すべきだ、と言っているのです。そこのと ころを橋下氏は知ってか知らないでかわかりませんが、国と国の問題のように言いくるめています。そうではなく、元慰安婦という個人が日本政府を相手どって 補償を求めているのです。日本政府が元慰安婦の組織と交渉すればいいでしょう。国際司法裁判所は国と国の間の紛争を調停する機関ですから、橋下氏の主張は 的外れです。


また、最後の質問として、タラリさんが「(慰安婦問題について)私もあまりに希望が拒絶され続けるとあきらめムードにさえなりました。その気分に再び点火されたのが橋下発言であり、吉元玉さんの証言を聞く集会です。」とおっしゃっていますが、
今回の一連の橋下発言(内容はおっしゃってるように、おかしなことだらけと感じているでしょうが)、「ずっと足踏み状態だった慰安婦の問題を揺り動かすことができた」と考えるのか、それとも「全く余計な事」と考えるのか、どちらでしょうか。


橋 下氏のこの問題の原点は「日本だけが世界から侮辱されるのをなんとかしたいい」というものです。同時にもし、これこれの証拠があれば謝罪する、などという ことも言っていますが、これは伝統的な右より保守、右翼、歴史修正主義者などは絶対に口に出さない言葉です。要するにかれは世界からの侮辱をなくすことが できるのが、第一で慰安婦の事実はどうでもいいのです。

慰安婦問題の一番の基本は、強制連行があろうがなかろうが、国家の意思として、女性を拉致した、人身売買した証拠があろうがなかろうが、慰安所の中で悲惨な性暴力を受け続けたという事実です。そしてこの責任は日本軍・政府にあるのです。

こ の一点を見つめないでするいかなる提案も慰安婦問題を解決する一歩にはなりません。ものごとの中にはよかれと思ってやったことが悪い結果を招いたとか、悪 意でしたことがたまたまいい目に転んだということはままあります。しかし、慰安婦問題をごまかしたり、すり替えようとして言ったことには、それが例えいい 結果を生もうがまったく評価はできません。

もしかして、橋下氏の発言が慰安婦の運動に携わる人を奮起させたり、海外から袋叩きにあうこと によって日本の政治家が気持ちを変えるきっかけにでもなったと思いますか。私などが吉元玉さんの集会に出るきっかけを生んで慰安婦に対する関心が高まるこ とがいい方向に向いたと言えますか。橋下発言がいろんな意味で衝撃的だったとしても、元慰安婦を支援する運動は支援するひとたちが主体的に活動することに よってのみ動くのです。いくら衝撃的な発言であっても聞いたひとたちが心に刻んで活動しないことには解決の道を切り開くことはないのです。

ありがとうございます。タラリさんの、主張、おっしゃりたいことは、理解させていただきました。

>これは、”戦場の性は一般的、慰安所も売春も強姦も同じ”と言わんばかりの橋下の議論は正しいのか、という問いです。具体的な方策もない、被害者も声を挙げていない戦場の性暴力をどうやって予防するというのか、一度、橋下に聞いてみたいものです。

全く、僕の個人的な考えです。

強制連行による慰安所>強姦>慰安所・売春

以上の順に、悪いことではないかと思いますが、しかし、すべて人道に反したひどい行為です。どれも、認められてはいけないと思います。

その順番に賛成です。ただし、
軍慰安所>強姦>売春宿
にした方が意味ははっきりします。


橋 下氏は戦場での性の利用がすべて一律に悪いように言うのですが、強制性労働(性奴隷)は強姦より悪いです。犯罪類型で言えば、慰安婦制度は(1)拉致また は略取(2)人身売買(3)監禁(4)組織的・継続的強姦になりますから、単独の、あるいは集合的な強姦よりはるかに悪質です。売春宿は犯罪類型では買売春だけです。た だし、まったくの自由売春というのはほとんどなく、管理売春/強制売春が程度の差こそあれ、伴っていると思われます。ただし、戦前・戦中の世界各国の売春宿は日本の公娼制度よりはずっと自由を認められていたと思われます。

また、軍慰安所のなにが悪いか、そのもう一つの側面は軍・国家が「売春」「性労働」に加担するということです。この行為は倫理的には問題があるもので各国とも根絶を目標とした行為でした。それを他ならぬ国家が行なうということで国家の倫理観が根底から崩れるということになります。


>第一は極度の緊張がもたらす性欲の解放です。
戦 争に限らず、こういう現象があります。司法試験のときには男子便所でマスターベーションのあとが無数に見られるという話を聞いたことがあります。男性とい うのは極度の緊張状態から解放されたとき無性に性欲を満たしたくなるのです。ベルリン陥落時のソ連兵、南京陥落時の日本兵がその例です。

>第二は人種差別と相手国に対する徹底的な憎悪と侮蔑です。強姦は相手の国民に対する懲罰としての意味を持つのです。朝鮮戦争で北朝鮮に侵攻した韓国軍が北朝鮮の女性を強姦したり、慰安婦にしてしまったという例もその一例です。
>第三は占領国軍兵士が相手国民に対して圧倒的な権力を手にして、強姦を抑制するべき憲兵がまったく働かないときです。


こういったご意見、今回ただ橋下叩きだけをしている人からは、なかなか聞けない意見なので、とても参考になります。
ありがとうございます。


>現代の日本の風潮で私が危機感を持つのは、韓国・朝鮮・中国に対して極度の憎悪を振りまいて朝鮮人は国に帰れとか、朝鮮人を殺せとかわめくひとたちです。こういう思想・感情を持つものが、もし戦場に出れば強姦に罪悪感を感じないのは明らかでしょう。

これには、激しく同意です。韓国人、朝鮮人への差別的な発言や行動は、まるで「かつての日本人もそうだった」といっているようで、逆に戦時の日本の悪質な行動をすべて認めているようなものです。日本の評判をひどく落としている行為だと思います。


※タラリさんは、南京事件についても、ご考察、研究をされているようですが、こちらに関しましては、僕は全くの勉強不足でして、タラリさんと議論できるほどではないので、また勉強したいと思っています。


その他の、タラリさんのお考えの趣旨、理解させていただきました。本当に勉強になります。



さて、今回の橋下氏の「慰安婦問題発言」。
僕が注目した理由は、橋下氏が「右派、左派の両方から、嫌われかねない」、そういう発言をしたニュータイプの政治家だと感じたからです。その証拠に、自民・民主・共産党から共同で、問責決議案が提出されました。


おっしゃるように、橋下氏の今回の発言は、日本の侮辱をなくすため、「慰安婦問題」を利用していた気もします。
ですが、僕個人としては、この問題について考え、このようにタラリさんと意見交換をすることができたので、意味があったように思いますし、足踏み状態だった慰安婦問題が、多少動いたのは事実だと思います。

慰 安婦問題がいろんな場所で議論される機会が生じたのはいいことです。しかし、慰安婦問題解決のために1cmでも進ませることができたわけではありません。 慰安婦問題を解決させるのは元慰安婦の方たちやそれを支援する団体、組織の運動の力です。私もそのためになればと思ってブログをはじめたのです。


正直、一連の会見や、討論を聞いていて、橋下の「ディベート力」は日本一ではないかと思いました。ただ、弁論で言い負かしたからといって、それがすべて正しいとは思いません。
残念ながら、マスコミや一部の政治家は、「慰安婦を必要」と言ったことに対して、「橋下が言ったのか、一般論を言ったのか」ということだけに焦点をおいてバッシングをし、肝心な主張については、ほぼノータッチです。
ここは、ぜひタラリさんのように、相手の言ってる事の趣旨をちゃんと理解し、そして反論できる方が、橋下氏と討論していただきたいです。

ディ ベート力なるものをどう測るかの問題があります。確かに橋下はテレビの記者会見などで猛烈に言いますね。ただしパターンとして多いのは橋下のいわゆるフ ワッとした民意の辺りを扇動する、その層がわっと受けるのを誘うような言い方のときに強そうに見えるだけです。きちんと、論理的に内容で勝つというような 議論はかえつて不得手です。典型的な詭弁を使う、とにかく同じことを何回も挑戦的に言って相手の目をくらます、そういう戦術にたけているだけだと思いま す。彼が知識人とか有名人相手にツィッターで挑発したことがありましたが、小林よしのり、この人はもちろん私の立場と正反対の立ち位置ですが、簡単に負け て尻尾を巻いてにげてしまいました。

私は瞬間的な言語能力ではもちろん彼に及びませんが、とにかく、じっくり分析して相手の弱点を暴いて叩きのめすことはできます。

※日韓両方の意見に耳を傾けるという意味で、「吉元玉さんの集会」直接聞いてみたかったです。お話の全容がわかるサイトとかございましたら、教えていただきたいです。ネットでは、年齢矛盾だとかそんなことしか書かれていなくて、肝心のお話の趣旨がわからないので。。。

こ れは要約不可能じゃないかと思います。なぜかというとひとはこういう体験を聞くときにどのようにしてひどい目に会ったのか、どれほどひどい状況だったのか を聴き取ろうとしますよね。ところがどのようにして慰安所に連れていかれたのか、いったん短期間、朝鮮に戻された時期があったのですが、それがどういうわ けなのか、その辺はすーと通りすぎていくのです。そのあたりを個人的にでも聞いてみたいな、という気がするのですが、体験談というのはたいてい、どんな悲 惨な状況でもたんたんとして経緯もわからないことが多いのです。しかし、吉さんが遭遇されたつらい境遇というのはほんの少しの言葉でひたひたと感じられま す。声高にご自分の恨みつらみを謂うな話方では全然ありません。

吉元玉さんのお話は目を見張るようなものではありませんよ。体験のストーリーはたんたんとしていますが、どうしてそうなったのかはちょっとわからない部分が多いので、小説仕立てのような悲劇を期待すると肩透かしに合います。部分的には吉元玉さんを広島に迎え、証言を聞く集会に参加しました。  に書いた以上のことはありません。なぜ、そうなるのか。彼女を騙して連れて行ったひとたちの悪巧みというのは彼女自身はまったく知らないのです。突然、仕 事場が突然移動するわけだって彼女はまったく知らないのです。それから、兵士の性の相手をさせられてどれだけつらかったのか、それは女性として一番言うの がつらい、言えないことです。日本軍将校に日本刀の鞘で何度も殴られた話は強烈でしたが、それよりつらいこともあった。だけど言えないのです。むしろ言わ れない、話されない経験があるからこのような淡々とした話になるのでしょう。(完) 

橋下の慰安婦問題に対する元々の意見はどうなっているか。

  2012年8月24日、「赤旗」記者による橋下市長に対する慰安婦問題のインタビューが、産経・阿比留瑠比記者のブログで読める。
橋下の今回の慰安婦に対する発言はもともと持っていた意見をたまたま口走ったものらしい。反発が噴出したあとはそれに対抗するために付け加わった部分がある。彼の本来の考え方は昨年の8月のインタビューでわかる。当時と今とどこが変わったのか。
 なお、橋下の回答は繰り返しが多いので、主張は損なうことのないように配慮しつつ、適宜カットした。


Q赤旗 慰安婦問題だが、橋下市長は強制の事実は確たる証拠はないといったが、河野談話をみていると強制の事実を認めているが見直すべきか
 
橋 下氏 2007年の閣議決定では、強制連行の事実を直接示す記述は見当たらなかっ たと、そういう閣議決定が安倍内閣のときになされている(※「政府が発見した資料の中に、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述は見当たら なかった」)。僕は歴史家ではないから、すべての資料について、古文書等含めて行政文書を含めて全部調べたわけではないので、政治家として93年の河野談 話と、それについての2007年の閣議決定、この2つをもとにして自分の意見を組み立てている。
  
日 本政府が、日本の内閣が、正式に決定したのは安倍内閣のときの2007年の閣議決定であって、そこでは慰安婦の強制連行の事実は直接裏付けられていない と、これは日本政府の決定です。河野談話は閣議決定じゃないですから、官房長官の談話にすぎない。そういう2つの文書が出てきたときに、2つの政府からの 意思表示が出てきたときに、官房長官の談話と政府の、内閣の閣議決定どちらを尊重するのか、法的な位 置づけ、一般論としてどちらが重いのか。

Q 河野官房長官の談話は、政府もいろいろ調査して、いろんな資料にあたって出てきているわけですよね。
 
橋 下氏 閣議決定もそうじゃないですか。どちらの調査に信をおかなきゃいけないんですか。

むろん、内閣の閣議決定は官房長官談話より重要である。本来は河野談話にある内容は閣議決定すべきであったが、自民党内の抵抗があったためそうなっていないのである。

閣議決定は「政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示す記述は見当たらなかった」にとどまっている。河野談話の内容は「甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められ」、「慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった」ことを認定しており、閣議決定ではこれらの認識を覆すことはしていない。

また、歴代の内閣は河野談話を継承するとしてきた。安倍内閣は見直しに言及したが、現在は継承はしているという考えらしい。
軍や官憲によるいわゆる強制連行なるものの記述を政府や軍が記録したり、保存することは考えにくく、そのようなものがある可能性の方が低い。さらに内閣の調査において は探す範囲を限定して、本気で探さなかった、あるいは探すことすらしなかった疑いさえある(法務省関係、警察関係の文書が出てきていない)。

野党議員たちはすでに、裁判記録として残されているものがある ことを野党議員が指摘しており、現安倍内閣は強制連行資料が存在することを否定できなかった。
紙智子議員の質問に対する回答赤嶺議員に対する政府の回答


吉見(義明)さんという方ですが、あの方が強制連行の事実までは認められないとか、そ ういう発言があったりとか。まぁ、強制連行の事実については、いろんな意見ある中で、それでも日本政府は国家としての意思表示として2007年に強制連行 の事実を裏付ける証拠はなかったということを閣議決定している。だから、僕は韓国側の方に事実の有無を問題視しているわけではないですよと、証拠の有無な んですと、日本政府が調べた限りでは証拠はなかったと。
それから、済州島の方の吉田清治さんの主張について、新聞社か何かが済州島で確認したら、 そういう事実はないという報道が済州島の新聞社がしたとか、いろんな情報が調べれば出てくる。いろんな情報がある中で、強制連行の事実を裏付ける証拠が あったかなかったかといえば、それは日本政府としてはそういう証拠はなかったといっているわけです。

吉見義明氏が強制連行を否定した事実は存在しない。


それで今回、僕がこういう発言をしたら、韓国メディアは、証拠は河野談話といってきた。これは大変な、日本政府の大失態ですよ。河野談話は証拠ではないんですから。

韓国メディアが「証拠は河野談話」などと言った事実はない。実際はこういう報道だった。
>橋下大阪市長が妄言 中央日報 2012年08月22日08時25分  
>だが、こうした発言は慰安婦連行の強制性を認めた「河野談話」を正面から否定する日本右翼の主張を繰り返したものだ。



    韓国政府の言う強制連行とは、当時において日本政府が加盟していた婦女売買に関する国際条約に違反する行為である。つまり、「詐欺または、暴行、脅迫、権力 乱用、その他一切の強制手段」による動員を強制連行としている。最初は甘言による詐欺で慰安所に連れて行ったとしもそれは強制連行である。


僕ら裁判やるときに、事実の主張と証拠は別のもの。次元の違うものです。事実の主張というのは、証拠のあるなしに関わらず、事実として認識を表明すること。その認識を表明したことにかんして証拠があるかどうかというのは、証拠の問題なんでね。だ から河野談話というのは、事実主張の段階なんです。まだね。だって河野談話というのは、ああいうふうに認識を表明しただけ。証拠があるわけではないわけで す。

河野談話というのは政府による調査結果を基にした事実の認識である。談話作成のために宮沢内閣が収集した、政府・軍の文書と元慰安婦などの聴き取りなどの資料は保存されており、これが「証拠」にあたる。

この段落は典型的詭弁である。橋下は下線部分で事実の主張は証拠のあるなしに関らない、といいながら太字部分で河野談話は事実主張の段階であり、証拠があるわけではないとすり替えていることに注意。


河野談話で重要なことは、軍の関与、だから僕は軍の関与までは否定していません。そりゃ、慰安所という施設の性質からすれば、公的な管理は必要、衛生上、そして秩序上、それから戦時下という状況上、公的な管理は必要ですよ。今だって風俗営業は公安委員会の管理下にある、ある意味、慰安所という施設の性質からすれば公的な管理は必要。

軍の関与は衛生上のものだったり、秩序管理のみではない。軍は慰安所の設置、管理、運営。慰安婦の募集、業者の選定、慰安婦の移送など慰安所政策全般に関るものである。橋下はこれらの項目に対して故意に無視を決め込んでいる。


あと本人の意思に反してという言葉が河野談話のなかにあり、しかし本人の意思に反してというのは法律用語でも二つの意味があって、本人が不本意に感じているという意味と、第三者から強制的にやらされたということの意味が2つある。裁判なら、どっちかを確定するわけです。河野談話をつ くった作文者が誰か知らないけど、不本意という意味か、強制の意味なのかはっきりさせずに入れちゃったから、これ は大変な問題になった。

慰安所に送られてから、意に反して兵士の性の相手をさせられたという証言はある(慰安婦の主観)。
また、慰安所に拘束されているのであるから、客観的にも強制である(客観的事実)。
騙 されて連れて行かれている間は、本人の本当の意思を確認はできない。慰安所に連れて行かれてはじめて、騙されたということがわかる。そこで女性は不本意で あると感じる。慰安所では性労働を拒否できないし、居住の自由もないし、廃業の自由もなかった、ということは強制で間違いない。


あ とは慰安婦とか、慰安所というのが倫理的にどうなのかという問題で、強制的に連れてこられたのでなければ、倫理的な問題で、倫理的にみればね、かわいそう だ、とか、不本意にそういう仕事に就いて心身共に苦痛をこうむったというのはかわいそうだという問題はね、人間としてそういう感情が起こるのは当然だと思 いますけれども、強制的に連れて来たのでないという前提で、そういうしんどい仕事について大変でしたね、という気持ちを表すのは僕は否定しないけど、しか し強制的に連れてきたのではないということをはっきりさせた上で、そういう気持ちを表さないと、かわいそうですねという同情と、謝罪は別です。

この段落は曖昧な言い方で論点が明解でない。
慰安婦制度が倫理的にどうか。強制連行についてはもしそれがあれば悪いことを橋下も認めている。好きでもない複数の異性と性交をするのは倫理的にどうかという問題を除けば、女性の側で自発的なものか、強制されたものかだけが問題だ。

証言を読むと慰安所に騙されて慰安所に連れて来られて、ついたのが慰安所だと気がついた時点で返して下さいと訴えている。もちろん返してもらったひとはいないのでその後の兵士に対する性労働はすべて強制であった。


Q赤旗 証拠がないという政府の話は、公文書のことだろうと思うが
 
橋下氏 そうですね。
 
Q そうすると、ずれのない証言あると韓国サイドはいう
 
橋 下氏 それを戦わしたらいい、金(学順?)さんという方ですかね、最初いろんな問題出された方は裁判まで起こしたけれども、実は自分は身売りされたんだ と、日本の官憲に強制的に連れて行かれたのではなくて、いわゆる公娼制度とか、慰安所に身売りされたんだという事実も訴状に入っていたことあるし、いろん な証言あったり、いろんなものあると思うので、それを整理したらいい。

金 学順さんは妓生券番で芸事を習ったあと、養父に中国に連れていかれ、その後日本軍慰安婦にされた。慰安婦にされた経過については本人もよくわからないよう だ。そもそも、騙されて連れて行かれる本人が周囲の誰がどういう役割を演じていたか、知るよしもない。慰安所で働くつもりがなかったことはたびたび行なっ た証言でも一貫している。金さんの場合も強制連行と慰安所での性労働強制は明らかである。


日本政府は公文書だけではないですよ、河野談話やる前の証言者にも聞き取りをやったわけで、その揺れというのは客観的な証拠になりえなかったという判断の下に2007年の閣議決定やったわけですから。

河 野談話は証言の聞き取り調査も総合して判断したことを明言している。しかし、「証言の揺れのめ客観的な証拠になりえなかった」という判断を下したとは 2007年の閣議決定には一言も書いていない。閣議決定でも河野談話は引きついでいる以上、証言を証拠としないとは言っていないのが事実である。(2007年の「閣議決定」(質問主意書に対する回答)は末尾に提示)


慰安婦の問題は、2つの問題を間違っちゃいけない。強制的に連れてきた、これはね、あってはならない。もしそれがあるなら、謝らなきゃいけない。もし慰安婦とか慰安所を問題視しているのであれば、それは日本だけじゃないですよ、もっといえば、現代社会にあっても同じような状態、各国に よって制度は違うけれども、いわゆる性を商売にすることは世界各国でもあるわけです。こういう問題について、それは倫理的によくないとか、いろんな経緯が あってそうなったことはかわいそうですね、違う職業に就くならサポートしますよという話と、強制的につれて来たからごめんなさい、という話は別問題です よ。

強制連行はあった。慰安婦制度の問題とは強制連行と性労働の強制である。韓国の主張もそうである。単なる売春宿を軍隊が使用しても慰安所とは言わない。強制性労働を軍がさせるのが軍慰安所であり、当時作った国はドイツと日本だけである。


Q 慰安婦の証言は証拠にはならないのか
 
橋下氏 閣議決定ではなっていない。
 

閣 議決定で証言を証拠としないということは述べていない。公文書が発見されないと言っただけである。もちろん、証言だけで決めていいのかという声があるから 閣議決定をしたのであろうが、一方で河野談話を引き継ぐと安倍首相も明言しているので、証言が証拠にならない、と言っているわけでもない。


Q 橋下さんは証拠にならないという認識か
 
橋下氏 証言の信用性があるかどうかですね。言ったから証拠とはならない。裁判でもそうです。証人が何十人、何百人出てきても、そこが信用性に足りるかどうかというところが問題。いろいろ慰安婦が証言者として出てきたが、しかし、それが40何人の証言者のうち半数近くが身売りだったとかいう話だったから、強制の話ではないという整理されたこともある。身売りの話と、家と業者の間での身売りの話と、政府が国が強制的に拉致、暴行、脅迫をもって連行したというのは別の話です。
 

よ く、証言の信憑性なるものを否定する議論があるが、証言の中核は騙して連れてこられ、性労働を拒否すると暴行された、脅されたというものばかりである。ま た、証言はひとつや二つではなく、多数の証言が存在し、少しずつ違った状況が述べられており、安易に否定することができない。司法の場でも事実認定がされ ている。

Q 暴行、脅迫じゃなくて、だまして連れてきて…
 
橋下氏 それは誰がだましたんですか
 
Q 業者とか含めて…
 
橋下氏 業者は国じゃないですよ
 
Q 軍の関与で業者がつれてきているという事実があります
 
橋下氏 その証拠はないです。出ているものはないです。

これは橋下の認識不足で慰安婦集めの業者は軍が統制すると明確に述べている。それが、慰安婦に対する軍の関与が証明されたはじめての資料である陸支密第745号である。(この解説は)

 

Q だまされて連れてこられた場所が慰安所だった場合も強制にはあたらないという考えか
 
橋下氏 それは日本政府の話じゃないですね。民間業者と慰安婦の話ですね。
 
Q 軍の関与で
 
橋下氏 軍が関与していたのは施設を秩序と衛生管理上の問題から、管理していたのであって、慰安婦をだまして軍が連れてきたという証拠はない。
 
Q もし、それが証言としてあったとしても、証拠とはならないのか
 
橋 下氏 だから、先ほどから繰り返して言うが、証言が採用されるかどうかは信用性の問題ですから。聞き取り調査をして、本当にそれが信用性あるのかどうなの か、事実と照らしてね、証言はしゃべったからすぐ証拠ではなくて、事実と照らし合わせて信用性がどうなのかという信用性をチェックしなきゃいけない。いま慰安婦問題で、強制連行があった、あったと言っている人たちは、客観的な証拠はない中で、本人たちの証言で強制連行があったといっているが、その証言内容をしっかり精査する作業を韓国政府の方も日本政府もしっかりやらないといけないと思います。

証言も元にして作成された河野談話は安倍内閣も継承するという立場である。とすればそもそも証言内容に具体的にどういう疑問があるのか、ということを橋下自身が明確に示すべきだろう。 

 

Q 日ごろ外交問題は慎重に発言するが、この問題は、どうしてここまで突っ込んで発言するのか
 
本来は大阪市長の立場で言うべきではな いけど、現状維持を韓国サイドの方が崩してきた。大統領が竹島に、これは不法上陸ですよ、わが日本国の立場からすれば、何で訪問なんて言葉を使うのかわか りませんけれども、わが日本国の立場からすれば不法上陸、そうなれば根っ子の部分については一政治家としてしっかり発言しないといけないと思っている。
し かし、隣国同士なので、早く事態の収束を図って、それから一番の根っ子の部分、慰安婦の問題が、両国の国民の心の中にくすぶっていることは間違いないか ら、この部分についてね、どうくすぶりを治めていくかといえば、やっぱり腹に入っているモノを表に出して、何が問題で、この問題についてはどうなんだとい うところをはっきりと明らかに、あいまいにせずに決着すべきだと思う。それが日韓関係をレベルの高いものにすると確信している。

河野談話さえ、「あいまいな決着を図ってきた」部分は存在する。それを日本に責任なしに戻そうとするのが、橋下である。これは日韓関係を修復できないものにする。

(了)


 安倍首相の「慰安婦」問題への認識に関する質問主意書辻元清美議員)(当ブログへの該当部分のみ)

http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a166110.htm

 

 1 「定義が変わったことを前提に」と安倍首相は発言しているが、何の定義が、いつ、どこで、どのように変わった事実があるのか。変わった理由は何か。具体的に明らかにされたい。

 2 「当初、定義されていた強制性を裏付けるものはなかった。その証拠はなかったのは事実ではないかと思う」と安倍首相は発言しているが、政府は首相が「なかったのは事実」と断定するに足る「証拠」の所在調査をいつ、どのような方法で行ったのか。予算を含めた調査結果の詳細を明らかにされたい。

 3 安倍首相は、どのような資料があれば、「当初、定義されていた強制性を裏付ける証拠」になるという認識か。

 


衆議院議員辻元清美君提出安倍首相の「慰安婦」問題への認識に関する質問に対する答弁書(該当部分のみ表示)

http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b166110.htm

一の1から3までについて

 お尋ねは、「強制性」の定義に関連するものであるが、慰安婦問題については、政府において、平成三年十二月から平成五年八月まで関係資料の調査及び関係者からの聞き取りを行い、これらを全体として判断した結果、同月四日の内閣官房長官談話(以下「官房長官談話」という。)のとおりとなったものである。また、同日の調査結果の発表までに政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかったところである。

 調査結果の詳細については、「いわゆる従軍慰安婦問題について」(平成五年八月四日内閣官房内閣外政審議室)において既に公表しているところであるが、調査に関する予算の執行に関する資料については、その保存期間が経過していることから保存されておらず、これについてお答えすることは困難である。

「荻上チキ・Session-22」の「歴史学の第一人者と考える『慰安婦問題』」を聴く―吉見・秦対談

6月13日に放送された、TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」の「歴史学の第一人者と考える『慰安婦問題』」(対局モード)の書き起こしに私なりの感想、批評を行なった。
書 き起こしについては当初なるべく、音声通りに書こうとしたが、とても無理だった。ラジオで聞くとわかったつもりでも書き起こすと冗長になったり、意味があ いまいになるとがあり、どうしても多少の編集が必要だった。編集の度合いは場所によってかなりばらつきがあるのでその点に留意してお読みください。


<<冒頭の部分は省略>>

質問mail>従軍慰安婦論争はいままでいろいろありましたが、橋下発言で政治学的・歴史学的論争が再燃しましたが、会見での発言をどう思いますか。

秦)政治的にはあれこれ言うことではない。
とにかく舌足らずであった。あちこちにあったその辺が大きくクローズアップされた。
全然予定してなかったことを触れてしまったが、事実関係については大体そのとおりだった。
ほぼ正確だった。

司会)インターネットで確認してほしいが、舌足らずの面とは例えばどういうことだった?

秦)新聞報道では「当時の」が最初は抜けていた。まさに現在の時点で必要だったと彼が考えているととられた。
あとで言い直した。聞いているほうも当時の日本軍指導者たちが必要と考えて設立した、
そういう意味だ、舌足らずであった。そういうのがほかにもそういう何点かあった。

司会)メディア側の誤報だった、という発言もありましたが。

吉見)びっくりするるようなとんでもない発言。
舌足らずとおっしゃったけど「慰安婦制度が必要だったのは誰でもわかる」と言うのは素直に読めば「当時も今も必要だ」というのを認めたこと。
それとセットになって沖縄米軍に活用を勧めた。ピタリと平仄が合う。
失言、舌足らずでなくいまでも撤回していない。

在日米軍の発言は撤回したが、当時は彼はそう思っていたんでしょう
ただし前の方の発言はマスメディアの誤解だ、今は許されません、というが撤回していない。
不誠実な発言。


司会)彼の歴史的認識については

吉見)歴史的な認識についても彼はよく知らない。
ひとつは慰安所で女性に対する強制があったことを否定している。
実際、慰安所に閉じ込められ軍人の性の相手をさせられた、それはひどい状態である。
慰安所の制度というのは軍が作った制度であるけど居住、外出、廃業、拒否の自由がないというような状況の中で性の相手をさせられている。
それを彼は知らない。


質問mail>慰安婦という言葉いつ出来た言葉で誰が作った言葉ですか。世界で慰安婦という言葉はあるんでしょうか

秦)はっきりしないよ。慰安婦という言葉は少なくとも日中戦争期の軍の文書にも出てくるんです
それに従軍という言葉をつけたのは千田夏光というがはっきりしない、確実とはいえない、もっと前の例もある。


司会)慰安婦というのはどういう存在か。

秦)慰安婦制度というのは戦地における公娼制度であり、その業に従事する女性が娼妓、公娼制度の延長線上にあるわけです。

司会)延長線上ということは、まったく同じものではない、延長線上にあるが違いはあるということですか。

秦)戦地ですから、それなりの違いはあります。
一番の違いは内地は警察が監督、外地では憲兵、軍医が監督しているそこが違う。憲兵はsecurity、
機密漏洩の危険があるため憲兵が監督している。内地の遊郭で働いていて、
同じことをして、高い給与が取れそうだ。それから動員が大規模で内地から多数の男が戦地に移っちゃう。
だから、女性がそこへ行って同じことをやる。
公娼制度と慰安婦制度で制度上の違いはない。制度としてはほぼ同じ。

吉見)両者に関連はあるが明らかに別のもの、内地にある公娼は民間の業者が運営しているが、
軍の慰安所は軍が建物を接収して、女性を集める。軍が選定した業者に集めさせる場合も委託する。
軍が規則も料金も決める、軍人・軍属だけが使える。
内地の公娼制度も事実上の性奴隷制度、人身売買を基礎にして成り立っている
人身売買は公認されてこれは合法。
公娼制度は事実上の性奴隷制度。建前として自由廃業の規定がある。
慰安婦制度の場合は自由廃業の規定さえない。性奴隷制度の意味合いがより強い。
軍の慰安所は公娼より進んだ形の性奴隷制度。

もうひとつは、国内では人身売買は犯罪ではなかった。国外に連れ出す国外移送目的人身売買罪は犯罪。
当時の刑法で3年以上の懲役という重い刑罰を科される。
仮に人身売買、軍の施設であるから軍の責任が出てくる。


秦)同意しかねる。
内地の公娼制度を性奴隷だということになるとオランダの飾り窓、アメリカでも連邦はだめだがネバダ州は公認
これはみんなも性奴隷ですか。

吉見)それは人身売買しているわけですか

秦)志願した人もいるわけでしょう。
高い給料に引かれてね。

吉見)日本の身売りは人身売買。
少なくとも人身売買を元にしていれば性奴隷制

秦)公娼であっても人身売買でなく志願であれば奴隷制ではない。
自由意志であって性労働をしているのであれば問題ない。

日本の身売りというのは人身売買
いかんということになっているんですよ

マリールイーズ
人身売買、マリールイーズがあるでしょ
それは建前でしょ。

秦)人身売買、売ったという形にしない、年季奉公の意味あいだ。
要するに金を返済する場合娘には必ずしも伝えられていない。
身売りなんですね。騙しと思う場合もある。
1936年の調査ってのはあるんですけど、なぜ(娼妓に)なったかのアンケート調査、家庭の事情が99.6%なんですよ。
そう思い込まないといけない。言うに忍びない。
そうすると騙されたというのは、親も言いそびれる。
自由意志か自由意志でないかどうか誰が判定するのか。

吉見)拘束しているわけですからそれは。


司会)大正期の娼妓の話があるが、親もあえて騙しているかも知れないし、(子も)内実を知らなかったほうがいいのかもしれない。
売春によってお金を返すそういうシステムになっている。

秦)ネバダに行って大きな声で弾劾することができますか。
志願している場合ですよ。自発的かどうか、契約じゃないんですよ、逃げても構わないけど。

秦)売春によって、借り入れ金を返済する
大審院判決があるでしょ。

吉見)それは当時の判決に問題があった。
ひとつの契約を二つにわけて、第一の、前借金は違法だが、
もうひとつの方、借りた借金は返さなくてはならないとしたためである。

この段落から急にヒートアップして両者の発言が交錯して議論を追いきれないところがある。
秦さんは日本の公娼と他国の公娼が同じであると吉見さんも認識を持っている前提で議論を進めたので話がこんぐらかる。
オランダ、ネバダの「公娼」と日本の公娼制度が同じかどうか、もし同質・同等のものであれば戦前の日本と較べてはるかに人権意識が高いはずの両国で大問題になっているだろう。
秦さんが同じだと思っているのなら、現地調査した結果を両国で訴えればいいだろう。
もし事実であれば秦さんが願っているように日本への非難はぐんと下火になるはずだからだ。

 


吉見)僕は日本軍慰安婦制度は人身売買、
朝鮮では騙してつれていく、誘拐・ある場合には略取もある
付け加えると占領地ではは軍が地元の有力者に差し出せ
権力乱用による半強制によって成り立つ

秦)意に反してと言っても誰が意に反したことを証明するのか。
例えば身の上話(証言のことですね)
朝鮮人の証言、一式五通り、いろいろあってどれが本当か
動機としては主語をはずしたんですよ
つまり連行・だましをはずした、挺対協がやめさせた

朝鮮人の親が朝鮮人のブローカーに売って
朝鮮人の抱え主に売ってここまでは一本(筋)

私は政府にね、ブローカーを見つければわかるよ、
しかしも政府はそんなことは到底韓国政府に言えない、とね。

大多数はそのルートで戦地に行って軍とわたりをつける、
需要と供給ですからこれは一種の商談なのでどっちが先といえない

司会)騙したのは軍の責任は問われないということですね

秦)ええ、ブローカーの段階では契約書というのは親とブローカーの間、軍と抱え主の間で。軍と抱え主の間で軍の嘱託でもないんですよ。軍の御用商人、一種の商談であって両方の需要と供給で決まる

秦は女性が意に反して連れていかれたかどうか、何によって証明するのか、女性の証言があやふやなので、証言では証明できない、というのである。
しかし、これは無理筋である。第一に女性たちの親もブローカーもすでに死んでいる。また、女性たちが引き渡される状況を日記や、帳簿などにも書き残すはずがない。(内地の一般の公娼の前借金の書類は参考にはなるかも知れないが)。
秦は女性たちの親が自由意志で商行為として娘を売り払ったに違いない、と言っているようなのだが、「ブローカーに聞いたらわかる」式で言えばそのような証明をするなら、親たちの証言を持ってこい、という話になる。
歴史は現在ある、利用できる証言・資料でしか作ることができない。今のところ発見された例もない、探してもほとんどあるはずがない親やブローカーの証言では歴史は作れない。今あるのは、軍・政府の文書資料と慰安婦の証言、日本軍兵士の日記・証言のみである。吉見の所論、河野談話の結論はそれによっている。

 



司会)御用商人というのはだれでもなれたというわけではないですよね。
ある種の許可証、軍の許可証というのがあったんでしょ。

秦)それはいろいろコネをつけて、御用商人なんてみんなそうでしょう
私はみんな宮中誤用たしというのがあるでしょ。正式な契約なんてないんですよ。、
御用商人、民法上の関係は切れる。どう連れて来られたはわからない。

吉見)業者ですけどこれは軍が選定した業者、総督府が選定した、軍属の待遇を持っている。

業者というのは慰安所を経営している、いわゆる抱え主と、直接女性を勧誘したり、親と交渉して勧誘するブローカーのことだが、両者はほぼ一体である。
そして業者は軍・総督府が選定したものであるということは、はっきりした文書が残されている。
秦は御用商人が占領地に行って軍に渡りをつけたようなことを言うのだが、軍のニーズも聞かずに末端の部隊に直接交渉することはありえない。派遣軍で統制するとはっきり書いてあるではないか。


秦)軍属名簿がある。軍属なら給与が払われる
軍属待遇。軍属なら給料が払われるでしょう。

吉見)国会答弁では無給の軍属という言い方をしている
そういう言い方をしている

秦)女性にも軍属与えた?
それはありえないですね、
いつ頃の答弁、戦後ですね

吉見)南方に行くのは船は全部便宜供与

秦)(それは)正式の軍属待遇ではない。
戦地によって宿舎その他の便宜が必要、便宜供与に過ぎない

吉見)昭和43年の4月26日の社会労働委員会の会議録
なにか身分がなければならないので無給の軍属ということにした
宿舎やその他の便宜をはかるためには無給の軍属ということにした、回答したのは厚生省の役人

秦)それは(厚生省の役人の)認識が誤っている。
辞令なんか出ていないはずですよ。
乗船許可を与えるだけ

吉見)慰安婦に対しては軍従属者という待遇を与えている。
外務省でも慰安婦は軍従属者という。純粋な民間人ではないということですね。

業者すなわち「ブローカー」ないし「抱え主」の話になる。軍属ではなかったという秦と、業者は軍属で慰安婦は軍従属者であるという吉見。
軍属名簿と給料に基礎を置く、秦と厚生省の回答をもち出す吉見の対決になる。
秦 は厚生省の役人の認識が間違っている、というのだが、官僚というのは官僚か民間人か、あるいは官僚に連なるなにものであるか、その辺は定規で引いたように 確実に仕分けしている。秦は名簿にないというが、名簿にはいろんな事由で書かれない場合においても、独自の見解で仕分けをしており、その仕分けはずつと引 き継がれる。軍属かどうかは学者が決めるのではなく、官僚が決めているのである。これは秦の負けである。




吉見)人身売買という犯罪を犯して海外につれていく。軍の慰安所に入れる
軍の慰安所はチェックしている

秦)どうやってチェックするんですか。

吉見)契約関係を調べたり、書類を見る。

秦)そんなことを書くひとはいませんよ。
仕事を失うんですから。
女たちもいくらでも補給源があるわけですから。

ここでも齟齬があるようだ。吉見が言う書類というのはブローカーや抱え主が書いた書類のことだろう。
秦は女性が書類を書いたと受け取っているようだ。また、内地の娼妓から流れてきたものの中には「志願」もいたかもしれないが、大多数は騙されて連れてこられるわけである。騙されて連れてこられた女性が「仕事を失う」ことを恐れるはずはないのだが。


吉見)そんなことはありません。

秦)インフォーマルでしょ。

吉見)漢口慰安所、(秦、うんうん)
性病検査のときにこういうことが。
慰安所というところでこんなことをさせられるとはしらなかった
帰りたい、帰らせてくれ、
翌日泣きはらして体をぶるぶる震わせて性病検査に
、長沢健一さんという軍医
その日はできなかった、翌日性病検査に応じる、おそらく業者に殴られて
この女性は慰安所というのを知らないできた、騙してつれてこられた、これは誘拐罪

秦)信じるわけですか、慰安所に行くというのに、どの程度のインテリジェンスのある女性か。
だれかに聞けばいいじゃないですか。

吉見)田舎から騙されてつれてこられて重い借金を負っていると軍医は言っている
誘拐罪・人身売買である。犯罪であるということを知らない。
ところが結局慰安所に入れられてしまう。
業者は逮捕しなくちゃいけない。

秦)親が借金を返さないのがいけないんですよ。

吉見)秦さんが人身売買を認めている

焦点は人身売買かどうかである。ここでも話がかみ合わない。
秦は親が借金のかたに売ったのだから、合意であり、ブローカーと親との間の自由な契約であるから、人身売買ではない、ということなのだろう。

ただし、吉見があげた漢口慰安所の女性のケースでは、親とブローカーの「契約内容」などまるでわからないのである。女性が騙されて借金を負わされて来ているというのを秦は何をもって否定できるのであろう。
ブローカーが正しく条件提示していれば、自由な契約との見方も成り立つ余地がある。
しかし、兵隊さんへの性のサービスで働いて返すとか、廃業の自由、居住の自由、接客拒否の自由がないなどの条件提示をした上で手放す親がはたしてどれほどいただろうか、かなり疑問だ。
借金をしていれば何を強制してもいいか、ちょっと神経を疑う発言もある。

 


RNガリレオさん>従軍慰安婦は帰れたのか。

秦)私は生還率を計算したことがあるんですよ。
控えめ目にみて96%。
慰安婦と看護婦は比較的安全な場所にいた。
日赤看護婦より低いことはない。

吉見)何%といのは計算したことはない。日赤看護婦より低い。
数人から数十人、性病を映されたり、そこで病気でなくなる。
戦地で命を落とすした女性は少なくなかった。

秦が誇らしげに「生還率を計算した」と言うのを聞いて呆れた。
従軍看護婦の場合との比較をしたというのだが、看護婦だって安全な基幹野戦病院にいたものは多い。慰安婦総数さえわかっていないのに生還率を計算できるはずがない。

 



司会)強制連行、軍の関与、責任がポイントになるかと思います。

吉見)細く言えばいろいろあるが、強制連行があったかどう重要ではない。
慰安所での4つの自由が問題。

秦)私は強制連行なかったと思いますが、慰安所の状況はそんなにひどいものだったのか。

その前に秦さんから。強制連行があったかどうか、4つの自由があったかどうか。

秦)慰安所の状況はそれほどひどいものであったか。
居住、外出、廃業、接客拒否の自由がないなどと文字通りの性奴隷のように述べておられる。そんなことはない。従軍慰安婦資料集、これに1945年北ビルマ韓国人慰安婦女性の証言がある。20人の慰安婦の証言だ。
米軍の尋問調書によれば、兵隊さんとピクニックに行く、演芸会や夕食会に招かれる、蓄音機を持ち都会では買い物に行く。
一部の慰安婦帰国した。接客を断わることもできた。結婚申し込みが殺到したそうだ。

月の収入750円そのころ日本の兵隊さんは月給10円、これは日赤の看護婦さんの10倍、雇い主より高い給料をもらっている。こういう状況下にあった慰安婦が性奴隷であったと思えません。

吉見)これは女性たちが言っているとおっしゃいましたが、2名の業者と20人の慰安婦の聴き取り、どの部分が業者の証言か、どの部分が慰安婦女性の証言かもわからない。

スポーツ行事に出席したというのは戦地に女性がいないので、そういうところに連れ出す。夕食会に出席というのも同じ。
高収入だということですけど当時のビルマのものすごいインフレ考慮に入れておられない。軍票を大量に増刷していた。1943年にはすごいインフレで1945年は無価値になっていた。兵士たちは持っていても何の役にも立たないからチップとして女性たちに渡す。
南洋開発銀行が発行1ルピー=1円。外地銀行を作って内地にインフレが及ばないようにした。

秦さんが引用されなかったことですが、業者の搾取があって生活困難になったことが証言にある。
もし、高額であれぱどうして生活困難になるんですかね。
捕虜尋問報告の一番はじめでその部分でどうしてビルマにつれてこられたか書いてある。
1942年5月に日本の周旋業者は仕事の性格は、一般的に包帯を巻いてやり将兵を喜ばす仕事と説明
これは誘拐、多額の借金を返済する好機と説明、偽りの言葉で誘う、これは甘言に相当
現地で拘束された生活をした。

秦)これなんかも非常に楽しかった
軍もそれなりに気を使った。業者側も軍と慰安婦に争いがあると
慰安婦に有利になるように計らっているんですよ。

居住の自由と言いますが看護婦だって居住の自由はない、

戦地に赴いた兵士の境遇がさまざまで、夥しい死者、餓死者を出した戦線もあれば、ほとんど戦闘のない孤島で食糧にも不自由せず終戦を迎えた兵士もある。
慰 安婦だって、非常に恵まれた立地にいられた場合もあれば、兵士とともに悲惨な境遇に叩き込まれたものもいる。また、時期によってその両方を体験した慰安婦 もいるのである。北ビルマにおける慰安婦たちの「高待遇」については浅野豊美の分析を読むとよい。しかし、どの慰安婦においても、その境遇は性奴隷制の枠 のものだったことだけが真実である。

 



吉見)日本人の周旋業者が甘言で誘った。
秦)日本人?当時は朝鮮人も日本人ですよ。
吉見)日本人と書いてあるから日本人でしょ。
秦)当時は朝鮮語がそんなうまい日本人はいなかった。
吉見)元締めが日本の業者手先きが朝鮮人、
軍からもらって軍の施設である

秦)朝鮮総督府の管内で朝鮮人が朝鮮人をだました。朝鮮人の警察が逮捕しないはずがない。

文玉珠(ムンオクチェ)という慰安婦ラングーンにいたんですね、将軍から兵隊にまで愛された
この間に5万円貯金ができた、昭和18年送金した。
非常に楽しかったとある。軍もそれなりに気をつかった
米軍の尋問調書を読むと3つの自由があった。居住の自由はないが当然。

吉見)看護をするのは本人にとっては名誉なことですけど性従事と違う

秦)職業のひとつと割り切ってやっているんだから。
中では困っているひとも

秦)論点としては強制連行と
河野談話の中で言われたけど
強制連行はそもそも何で、あったかどうか


吉見)慰安所の労働実態がすべてだ
もうひとつは連れていかれる過程で軍が直接かどうかは別として関与したのは間違いない。
先ほどいった誘拐・略取があった。業者は軍に選定された、実際に被害が生じたのは軍の施設である慰安所。
(だから)軍に責任がある。
軍・官憲が直接責任がある暴行脅迫は
オランダ政府が白人女性の事件を報告しており、軍・官憲が関る事件は未遂を含めて8-9件ある

中国関係では4件提訴。
裁判では敗訴するが裁判所は日本軍が暴行・脅迫をして連れてきたという事実認定をした。


秦)10数件すべて敗訴、最初から勝つ見込みは0、運動が目的
仲間を集めて募金を集めて政治活動、経済化活動
国家無答責、時効で相手にされないのがわかってやっている。
事実認定ではなく陳述をしましたというだけ
中国に行って裏をとりましたか。
事実認定というのは馬鹿馬鹿しい
判事もおかしい、なぜ認定内容をそのままにするのか、法学会で論争になった。

事実認定と判決は別の範疇であって、事実認定では犯行を認めるが、諸種の事由により判決は無罪という場合もよくある。
国 側弁護人があえて、原告側の事実認定に反論しなかったかと言えば、もし、反論した結果敗れたらその影響は大きいと考えて反論を差し控えたのであろう。しか し、原告側の訴状にある事実に明らかな誤りがあれば国家無答責、除斥期間という最後の防御ラインに立てこもることなく、上訴理由に真っ向から反論したであ ろう。判決自体は敗訴だったが、日本軍が暴行・脅迫をして連れてきたという事実認定が残ったという意義は小さくない。しかも、ある判決では裁判では被告の 請求を阻却せざるを得なかったが、これは国が独自に救済のための立法を行なわなかったためであると異例の付言をした。この判決では事実認定はけっして国側 の「不戦敗」ではなく、裁判所が積極的な事実認定を下したものであることが明らかである。

 



司会)ではお二方からこれから若いひとに知ってもらいたいことを

秦)韓国の政治家が来て言った。
元々慰安婦問題というのは日本と韓国の支援勢力がやったこと、この問題は運動家とマスコミが作り出した。お宅のほうで一緒になってわれわれを怒らせた、と言っている。

吉見)慰安婦問題について事実が発掘されたことを知っていてください。
性奴隷制度であったことは定着している。日本政府としては救済の法案を通せば問題は解決する。



 

お二人とも両派を代表する学者であり、テレビに出てくる政治家のよう に相手の発言を遮るようなこともなく紳士的なのに新鮮な感じがした。当初は意見を述べ合うだけだったが、途中から意見の違いがはっきりとして討論らしく なった。ただし、議論がかみ合わないところが多々あり、お互いが自分の意見を言いっぱなしで終わる部分があったのは残念である。反面、ネット掲示板での議論を多く経験した 私からすると、両者ともに追及が甘く、相手をねじ伏せるような議論はなかった。お二人とも、機会があればまたやってもいいとのことで次回を期待したい。 

小林よしのり、極悪の反人権漫画家の慰安婦論を討つ(4) 

 最終章、小林は橋下、安倍らの偽りの謝罪をアメリカに対する媚びへつらいと見る。
確かに橋下、安倍は慰安婦に関する謝罪のポーズは責任の所在を明らかにしないものなので贋物である。彼らの言行を一致させれば小林の反人権的主張になるのも明らか。これは橋下、安倍の思想の本質ではある。


 

■ 橋下発言を批判する安倍の卑怯

 

  橋下は会見で「なぜ日本の慰安婦問題だけが世界的に取り上げられるのか」と訴えたが、その思いはよくわかるし、問い掛けとしても正しい。メディアから激し い非難を受けた後も、橋下は5月15日の記者会見ではさらにこう述べている。

 
 「日本が『性奴隷』を使っていたら、国として大変な恥になる。そうでなかったとしたら、当時の世界各国がやっていた対応と同じだったら、日本だけの特殊 性の恥ではない」
 

  そもそも慰安婦問題は、吉田清治なる人物の「自分が軍の命令を受けて朝鮮の女性を強制連行した」との証言を朝日新聞などが広めることで国際問題にまで発展 したわけだが、この証言の事実関係も吉田なる人物の経歴も後の検証ですべて嘘だとわかり、そのほかには日本軍による「強制連行」の証拠は一切出てこなかっ た。そもそも軍に属していたわけではないから、「従軍」ではなかった。慰安婦が「性奴隷」だったかどうかについて、国内での議論はとっくに決着している。


 

(1) 問題は「なぜ日本だけが悪く言われるか」ではなく、「これほど世界から指摘されているのに、なぜ悪かったことに気がつかないのか」ということである。 
日本の対応が特殊だったことはすでに述べた。

(2) 慰安婦問題はだれか一人や二人が騒ぎ立てて起こったものではけっしてない。その根本には5万人とも8万人とも言われる、悲惨な境遇に置かれた多数の慰安婦 が実在する。慰安婦問題が注目を集める発端となったのも朝鮮人元慰安婦の金学順さんが名乗り出て日本政府に補償を求めた事件であった。

(3) 強制連行はなにも官憲・軍が直接、暴力や威嚇で慰安婦を狩り集めたということに限ったわけではない。歴史学者、被害者を支援するひとたちは一貫して女性の 意に反して集められたということを強 制連行としている。強制連行には直接、暴力・脅迫によって連行する、いわゆる拉致と、騙して連れていく、略取のふたつがある。


(4)吉田清治の証言は一時注目を集めたが、本人の説明があいまいなので強制連行の証拠資料とするものはとうの昔にいなくなっている。ところで、官憲・軍 によって直接、強制連行されたのは慰安婦の中のごく一部であるにしても、確かに存在する(スマラン事件、中国山西省芋盂県の事例)。

(5)軍に属していないから「従軍」でないというのは誤り。従軍-と名のつく職能は軍に属していないものである(後述)。
軍人以外で軍に属しているものを軍属という。例ととしては
・軍事行政や主計・法務などの事務的業務
・国際法関係の法務業務
・通訳
・聖職者・宗教者
・技術部門の研究・開発
・軍の学校・教育機関等の教官で一般教養科目や語学等を担当する者
・車両・航空機や機械・資機材類の保守点検・整備
・軍需物資の補給・輸送業務
・軍事施設の建設や維持管理
・基地・駐屯地や艦艇内の売店や食堂等の営業
・その他様々な後方支援業務
(wikipediaによる)
がある。軍の慰安所の要員は軍属に当たる。そして慰安婦は軍従属者として位置づけられる。

一方、従軍は軍の外にあって軍隊に付き従い協力する民間人であって、従軍-牧師・神父、僧、記者・カメラマン、看護婦などがいる。軍隊に自分の意思で積極 的に軍隊に協力する人員であって、軍に自由に使役される立場の慰安婦は確かに「従軍」の名に相応しくない。ただ、外形的な基準に従えば「従軍」との名前を 与えられてもさほど違和感のない存在ではあった。


  つまり、橋下の認識はすべて正しいのだが、問題は慰安婦問題が、今は国内での学問的ステージから国際的な政治的なステージに移行しているということだ。ア メリカでは韓国側のロビー活動によって、慰安婦は「性奴隷」との認識が広まり、日本は完敗しているのが現状だ。議論で勝っても政治的には負けているのであ る。 

 この状況を打破するには方法は2つしかない。1つは中央突破 で、安倍晋三・首相が橋下発言を受けてアメリカに対して同様の宣言をすること。もう1つは、韓国と同じようにお金と人員を掛けて地道にロビー活動を展開す ることである。



(1)  学問的には慰安婦は軍が集め、慰安所で兵士に対する性サービスを強要したということが定着している。日本政府も軍の関与を認めた。国際的にも性奴隷制であ るという認識は一致している。ただし、それに反対する保守派政治家・右翼・歴史修正主義者の反対が強かったので公然と否定する風潮が出てきているだけのこ とである。 

(2) 日本の歴史学者が提示した資料、元慰安婦たちの証言により国 連人権委員会などの機関による検証でも日本政府の責任は認められた。国連人権委員会のクマラスワミ報告に対して日本政府は事実関係について反論できなかっ た。日本政府が反論しようにも反論の余地がなかったからである。

(3)2006年には日本政府はロビー活動に月に630万円を使って何の効果もなかった。もちろんこれからロビー活動をしても同じこと。安部の仲間たちは2007年と2012年の2回にわたって慰安婦に 対する日本の責任がないことを米紙でアピールしたがまったく賛同を得られなかった。今回の橋下発言に対しては韓国、中国、北朝鮮、アメリカ、ロシア などの政府当局者が厳しい批判を行い、国際的には完全に決着しているのであ る。

 

 


ところが、安倍政権は卑怯なことに橋下発言を批判した。稲田朋美・行革相は、「慰安婦制度は女性の人権に対する大変な侵害だ」と述べ、安倍自ら「安倍内 閣、自民党の立場とはまったく違う発言だ」と橋下バッシングに加担した。

 

  信じられない対応である。もともと安倍や稲田はなんと言っていたか。

 

  稲田は昨年8月31日付産経新聞で、「当時は『慰安婦』業は合法だった。それにもかかわらず『強制性』を認めて謝った河野談話を否定し、韓国や米国で宣伝 されているような、朝鮮半島の若い女性を多数、強制連行して慰安所で性奴隷にしたといった嘘で我が国の名誉を毀損することはやめていただきたいと断固、抗 議すべきである」と言っている。橋下発言と何が違うのか。

  安倍は昨年11月30日に開かれた日本記者クラブ主催の党首討論慰安婦問題について聞かれ、とし、前述の吉田証言に基づいた朝日新聞の記事を痛烈に批判 している。

 

  本来なら橋下の主張に呼応し、アメリカと対峙すべきなのに、彼らはアメリカの顔色を見て日和ったのである。そもそも安倍は前回の首相時代、ブッシュ大統領 との首脳会談で慰安婦問題に関し「総理大臣として申し訳ない」と謝罪した過去がある。安倍は最近になってそのことを否定しているが、ブッシュが「私は安倍 総理の謝罪を受け入れる」と発言したことは、首相官邸の記録にも残っている。政権に就いた途端、親米ポチの本性が露呈するのだ。

 


 

(1) 安倍、稲田が従来の立場を変えたかのような発言をしたのは事実である。

(2) 「安倍政権においてそれ(強制連行)を証明する事実はなかったということは閣議決定しています」ーこれは誤りで、「事実がなかった」のではなく、「資料が なかった」としたのである。それはともかくとして、今年の辻元氏の質問主意書に対する回答書では「これから新資料が出てくる可能性はある」としている。し たがって「資料がないとは言えない」ことを認めたことになり、一歩後退している。

(3) 安倍がブッシュ大統領との首脳会談時に「謝罪」発言を行なったのは事実だが、慰安婦問題の何について責任を感じてだれに「謝罪」したのかは明らかでない。 当然、この「謝罪」発言はうわべを取り繕うためのものであった。今年になって隙を見てなかったことのように見せようと画策したのだが、辻元清美議員の追及によりばれて進退窮 まっているのが現状だ。

 

 


■ アメリカに日和った産経

 

  日和っているのはメディアも同じだ。朝日新聞は5月15日付の社説で「橋下氏の一連の発言は、元慰安婦たちの傷口に塩を塗るばかりでなく、今を生きる女性 たち、さらには米兵をも侮辱するものだ」と批判した。捏造記事に対する反省は相変わらずないが、アメリカの虎の威を借りているので、余裕さえ感じられる。

 

  問題は保守を自任する産経新聞で、同日付の社説では「今の時代に政治家がこうしたことを公言するのは女性の尊厳を損なうものと言わざるを得ない。許されな い発言である」と以前とは真逆の論陣を張った。アメリカと安倍政権におもねっているのである。

 

  わしが慰安婦問題を取り上げた頃と違い、一般庶民の中には「言いたいことがわかる」という人も増えた。それだけ慰安婦に関する理解が進んだといえるが、し かしその一方で、彼ら庶民までが「政治家の発言としてはいかがなものか」と”政治的判断”をしてしまっている。結局、こうしてメディアも政治家も庶民も、 日本全体が慰安婦の議論を再び封殺しようとしている。安倍政権によって、むしろアメリカの顔色をうかがって生きていく「戦後レジーム」が復活したのであ る。

 

  橋下はそうした背景をわからないまま、愚直に正論を言い続けている。まさに「王様は裸だ」という子どもだ。橋下がさらけ出したのは、安倍と、安倍を首相に したこの国の、あまりにも情けない裸だった。 



橋下や安倍、産経新聞がさすがに言えない慰安婦の人権を傍若無人に踏みにじる発言を公然とするのが小林である。

女 性蔑視を隠そうともしない、橋下発言が批判されるのは当然である。私は小林よしのりとは正反対の立場に立つが、安倍や橋下が謝罪を口にする理由は理解できない。なぜなら、彼らは肝心要の慰安婦を悲惨な状況に落とした責任はだれにあるかについてまったく言明しないからである。「暖かい言葉をかけてあげる」必要などさらさらない。「人間として、また総理として心から同情するとともに、そうした極めて苦しい状況におかれたことについて申し訳ないという気持ちでいっぱいである」などと言う必要もまったくない。責任の所在についてなにも語らない謝罪は謝罪でない。

1000歩譲って強制連行が業者の責任であったとしても、その業者を利用したのは軍である。慰安婦性労働を強要したのが業者だとし ても、その業者を、監督も逮捕もせず、慰安婦に対する虐待を防止しなかったのは軍や警察の責任である。不作為の責任は存在する。そ れに対して何の説明もないまま、強制連行はなかったとか、国家意思による拉致はなかったと叫んでもまったく言い訳にならない。

安 倍や橋下は偽りの「ごめんなさい」で国民とアメリカや国際世論を騙しとおせると考えているのかも知れない。しかし、偽りの「ごめんなさい」を取り払ってみ れば、彼らの本心が慰安婦に人権なし、日本軍に悪いものはいない、日本と日本軍を悪く言うのは反日だというものしか残らない。女性たちの血の苦しみで自国 の利益をあがなったのは当然だという考えしかもっていないのは明らかだ。

 

 

 なぜか、橋下を庇い、小林によりそうのが秦郁彦である。


秦郁彦氏(現代史家)「強姦防止のため世界中に慰安所はできた

 

  第二次大戦当時、旧日本軍と同じような慰安所はドイツ軍にも設置され、お互い学んだわけもないのに驚くほど形態が似通っていた。韓国にも朝鮮戦争のとき に”テキサス村”と呼ばれる在韓米軍向けの慰安所があったことが韓国陸軍の戦史に記録されている。これは民間ではなく韓国政府が運営した慰安所だ。ベトナ ム戦争でも、米軍キャンプの周辺にはベトナム人売春婦を集めた「公認の軍用売春宿」が設置されていた。橋下市長の言う通り、世界中に慰安所はあったのだ。

 

  なぜ、慰安所は必要とされたのか。旧日本軍に慰安所が設置されたのは、上海事変の時が最初とされる。陸軍の軍法では略奪や暴行は禁止されていたが、日本兵 による略奪・強姦が頻発し、取締りを厳しくすると、犯行が見つからないよう女性を殺して処分するなどむしろ凶悪化したので、陸軍は頭を悩ませた。

 

  そこで、現地の業者に依頼してできたのが慰安所である。地元の村長なども良家の子女が襲われるのを防げるならと協力した。軍医が慰安婦の健康を管理するこ とで性病の蔓延を防ぐ目的もあった。世界中で慰安所や類似の施設が存在したのも同様の理由である。



(1) 日本軍が慰安所を作ったのは兵士たちに強姦をしないようにするためだった。それはいい。しかし、強姦阻止のためであるなら、なぜ強姦罪を単独で施行するよ う法改正をするのが有効だった。また、部下から強姦が出たら上官の昇進が遅れるという規則のため軍自身による強姦の摘発は出来なかった。ソ連軍はベルリン 入市後数日で強姦した兵を公開銃殺と決定、たちまち強姦数は激減した。

(2)慰安所は強姦をなくすためというよりは兵士に安上がりの娯楽を与えて、兵士のストレスや反抗を未然に防ぐ意味があったのである。日本軍 が強姦に頭を悩ました、というのは中国人が日本軍から離反して、占領軍政がうまくいかなくなるのを恐れたからであるが、中国市民の立場にたって強姦を減ら すことを真剣に考えたのではなかったのである。


(3) すでに徴発時に略奪と強姦の味を覚えた兵士は慰安所ができたあとも強姦をやめることはなかった。慰安所でのセックスが女性を完全にものとして、道具として 見る、人間性無視、中国人蔑視を教えるものだったからである。同時に戦争に敗れればこのように惨めに強姦被害に会う、それは必然だということを日本兵を中 心に国民に広げた。そのことから、満州においてソ連兵に慰安所を作る、敗戦後に米兵のための慰安所を作るという強迫観念にも似た慰安所有効論を導いた。

(4)現地の村長など「良家の子女が襲われるのを防げるならと協力した」などと村長が進んで協力したかのように言っているが、とんでもない。脅迫された村長と女性を供出させられた農民の苦しみを考えない、ひどい考えだ。

(5) 兵士に性病が蔓延して戦力が低下するのは各国共通の悩みであった。性病は兵士が性を求めることにより、共通して起こる事象ではあり、女性たちに対する検診 もまた共通の課題となるが、検診の実行によって売春宿が慰安所に変わったことはない。性病のコントロールと防諜の観点からは慰安所のシステムが最も運用が 容易だっただろうが、それでも旧連合国の各国軍は慰安所を作りはしなかった。