天に代わりて不義を討つ

歴史修正主義に反対します。難しいことをやさしく、わかっていると思うことを深く追求して書きます。議論を通じ、対話を通じて真実を求めます。

小林よしのり、極悪の反人権漫画家の慰安婦論を討つ(4) 

 最終章、小林は橋下、安倍らの偽りの謝罪をアメリカに対する媚びへつらいと見る。
確かに橋下、安倍は慰安婦に関する謝罪のポーズは責任の所在を明らかにしないものなので贋物である。彼らの言行を一致させれば小林の反人権的主張になるのも明らか。これは橋下、安倍の思想の本質ではある。


 

■ 橋下発言を批判する安倍の卑怯

 

  橋下は会見で「なぜ日本の慰安婦問題だけが世界的に取り上げられるのか」と訴えたが、その思いはよくわかるし、問い掛けとしても正しい。メディアから激し い非難を受けた後も、橋下は5月15日の記者会見ではさらにこう述べている。

 
 「日本が『性奴隷』を使っていたら、国として大変な恥になる。そうでなかったとしたら、当時の世界各国がやっていた対応と同じだったら、日本だけの特殊 性の恥ではない」
 

  そもそも慰安婦問題は、吉田清治なる人物の「自分が軍の命令を受けて朝鮮の女性を強制連行した」との証言を朝日新聞などが広めることで国際問題にまで発展 したわけだが、この証言の事実関係も吉田なる人物の経歴も後の検証ですべて嘘だとわかり、そのほかには日本軍による「強制連行」の証拠は一切出てこなかっ た。そもそも軍に属していたわけではないから、「従軍」ではなかった。慰安婦が「性奴隷」だったかどうかについて、国内での議論はとっくに決着している。


 

(1) 問題は「なぜ日本だけが悪く言われるか」ではなく、「これほど世界から指摘されているのに、なぜ悪かったことに気がつかないのか」ということである。 
日本の対応が特殊だったことはすでに述べた。

(2) 慰安婦問題はだれか一人や二人が騒ぎ立てて起こったものではけっしてない。その根本には5万人とも8万人とも言われる、悲惨な境遇に置かれた多数の慰安婦 が実在する。慰安婦問題が注目を集める発端となったのも朝鮮人元慰安婦の金学順さんが名乗り出て日本政府に補償を求めた事件であった。

(3) 強制連行はなにも官憲・軍が直接、暴力や威嚇で慰安婦を狩り集めたということに限ったわけではない。歴史学者、被害者を支援するひとたちは一貫して女性の 意に反して集められたということを強 制連行としている。強制連行には直接、暴力・脅迫によって連行する、いわゆる拉致と、騙して連れていく、略取のふたつがある。


(4)吉田清治の証言は一時注目を集めたが、本人の説明があいまいなので強制連行の証拠資料とするものはとうの昔にいなくなっている。ところで、官憲・軍 によって直接、強制連行されたのは慰安婦の中のごく一部であるにしても、確かに存在する(スマラン事件、中国山西省芋盂県の事例)。

(5)軍に属していないから「従軍」でないというのは誤り。従軍-と名のつく職能は軍に属していないものである(後述)。
軍人以外で軍に属しているものを軍属という。例ととしては
・軍事行政や主計・法務などの事務的業務
・国際法関係の法務業務
・通訳
・聖職者・宗教者
・技術部門の研究・開発
・軍の学校・教育機関等の教官で一般教養科目や語学等を担当する者
・車両・航空機や機械・資機材類の保守点検・整備
・軍需物資の補給・輸送業務
・軍事施設の建設や維持管理
・基地・駐屯地や艦艇内の売店や食堂等の営業
・その他様々な後方支援業務
(wikipediaによる)
がある。軍の慰安所の要員は軍属に当たる。そして慰安婦は軍従属者として位置づけられる。

一方、従軍は軍の外にあって軍隊に付き従い協力する民間人であって、従軍-牧師・神父、僧、記者・カメラマン、看護婦などがいる。軍隊に自分の意思で積極 的に軍隊に協力する人員であって、軍に自由に使役される立場の慰安婦は確かに「従軍」の名に相応しくない。ただ、外形的な基準に従えば「従軍」との名前を 与えられてもさほど違和感のない存在ではあった。


  つまり、橋下の認識はすべて正しいのだが、問題は慰安婦問題が、今は国内での学問的ステージから国際的な政治的なステージに移行しているということだ。ア メリカでは韓国側のロビー活動によって、慰安婦は「性奴隷」との認識が広まり、日本は完敗しているのが現状だ。議論で勝っても政治的には負けているのであ る。 

 この状況を打破するには方法は2つしかない。1つは中央突破 で、安倍晋三・首相が橋下発言を受けてアメリカに対して同様の宣言をすること。もう1つは、韓国と同じようにお金と人員を掛けて地道にロビー活動を展開す ることである。



(1)  学問的には慰安婦は軍が集め、慰安所で兵士に対する性サービスを強要したということが定着している。日本政府も軍の関与を認めた。国際的にも性奴隷制であ るという認識は一致している。ただし、それに反対する保守派政治家・右翼・歴史修正主義者の反対が強かったので公然と否定する風潮が出てきているだけのこ とである。 

(2) 日本の歴史学者が提示した資料、元慰安婦たちの証言により国 連人権委員会などの機関による検証でも日本政府の責任は認められた。国連人権委員会のクマラスワミ報告に対して日本政府は事実関係について反論できなかっ た。日本政府が反論しようにも反論の余地がなかったからである。

(3)2006年には日本政府はロビー活動に月に630万円を使って何の効果もなかった。もちろんこれからロビー活動をしても同じこと。安部の仲間たちは2007年と2012年の2回にわたって慰安婦に 対する日本の責任がないことを米紙でアピールしたがまったく賛同を得られなかった。今回の橋下発言に対しては韓国、中国、北朝鮮、アメリカ、ロシア などの政府当局者が厳しい批判を行い、国際的には完全に決着しているのであ る。

 

 


ところが、安倍政権は卑怯なことに橋下発言を批判した。稲田朋美・行革相は、「慰安婦制度は女性の人権に対する大変な侵害だ」と述べ、安倍自ら「安倍内 閣、自民党の立場とはまったく違う発言だ」と橋下バッシングに加担した。

 

  信じられない対応である。もともと安倍や稲田はなんと言っていたか。

 

  稲田は昨年8月31日付産経新聞で、「当時は『慰安婦』業は合法だった。それにもかかわらず『強制性』を認めて謝った河野談話を否定し、韓国や米国で宣伝 されているような、朝鮮半島の若い女性を多数、強制連行して慰安所で性奴隷にしたといった嘘で我が国の名誉を毀損することはやめていただきたいと断固、抗 議すべきである」と言っている。橋下発言と何が違うのか。

  安倍は昨年11月30日に開かれた日本記者クラブ主催の党首討論慰安婦問題について聞かれ、とし、前述の吉田証言に基づいた朝日新聞の記事を痛烈に批判 している。

 

  本来なら橋下の主張に呼応し、アメリカと対峙すべきなのに、彼らはアメリカの顔色を見て日和ったのである。そもそも安倍は前回の首相時代、ブッシュ大統領 との首脳会談で慰安婦問題に関し「総理大臣として申し訳ない」と謝罪した過去がある。安倍は最近になってそのことを否定しているが、ブッシュが「私は安倍 総理の謝罪を受け入れる」と発言したことは、首相官邸の記録にも残っている。政権に就いた途端、親米ポチの本性が露呈するのだ。

 


 

(1) 安倍、稲田が従来の立場を変えたかのような発言をしたのは事実である。

(2) 「安倍政権においてそれ(強制連行)を証明する事実はなかったということは閣議決定しています」ーこれは誤りで、「事実がなかった」のではなく、「資料が なかった」としたのである。それはともかくとして、今年の辻元氏の質問主意書に対する回答書では「これから新資料が出てくる可能性はある」としている。し たがって「資料がないとは言えない」ことを認めたことになり、一歩後退している。

(3) 安倍がブッシュ大統領との首脳会談時に「謝罪」発言を行なったのは事実だが、慰安婦問題の何について責任を感じてだれに「謝罪」したのかは明らかでない。 当然、この「謝罪」発言はうわべを取り繕うためのものであった。今年になって隙を見てなかったことのように見せようと画策したのだが、辻元清美議員の追及によりばれて進退窮 まっているのが現状だ。

 

 


■ アメリカに日和った産経

 

  日和っているのはメディアも同じだ。朝日新聞は5月15日付の社説で「橋下氏の一連の発言は、元慰安婦たちの傷口に塩を塗るばかりでなく、今を生きる女性 たち、さらには米兵をも侮辱するものだ」と批判した。捏造記事に対する反省は相変わらずないが、アメリカの虎の威を借りているので、余裕さえ感じられる。

 

  問題は保守を自任する産経新聞で、同日付の社説では「今の時代に政治家がこうしたことを公言するのは女性の尊厳を損なうものと言わざるを得ない。許されな い発言である」と以前とは真逆の論陣を張った。アメリカと安倍政権におもねっているのである。

 

  わしが慰安婦問題を取り上げた頃と違い、一般庶民の中には「言いたいことがわかる」という人も増えた。それだけ慰安婦に関する理解が進んだといえるが、し かしその一方で、彼ら庶民までが「政治家の発言としてはいかがなものか」と”政治的判断”をしてしまっている。結局、こうしてメディアも政治家も庶民も、 日本全体が慰安婦の議論を再び封殺しようとしている。安倍政権によって、むしろアメリカの顔色をうかがって生きていく「戦後レジーム」が復活したのであ る。

 

  橋下はそうした背景をわからないまま、愚直に正論を言い続けている。まさに「王様は裸だ」という子どもだ。橋下がさらけ出したのは、安倍と、安倍を首相に したこの国の、あまりにも情けない裸だった。 



橋下や安倍、産経新聞がさすがに言えない慰安婦の人権を傍若無人に踏みにじる発言を公然とするのが小林である。

女 性蔑視を隠そうともしない、橋下発言が批判されるのは当然である。私は小林よしのりとは正反対の立場に立つが、安倍や橋下が謝罪を口にする理由は理解できない。なぜなら、彼らは肝心要の慰安婦を悲惨な状況に落とした責任はだれにあるかについてまったく言明しないからである。「暖かい言葉をかけてあげる」必要などさらさらない。「人間として、また総理として心から同情するとともに、そうした極めて苦しい状況におかれたことについて申し訳ないという気持ちでいっぱいである」などと言う必要もまったくない。責任の所在についてなにも語らない謝罪は謝罪でない。

1000歩譲って強制連行が業者の責任であったとしても、その業者を利用したのは軍である。慰安婦性労働を強要したのが業者だとし ても、その業者を、監督も逮捕もせず、慰安婦に対する虐待を防止しなかったのは軍や警察の責任である。不作為の責任は存在する。そ れに対して何の説明もないまま、強制連行はなかったとか、国家意思による拉致はなかったと叫んでもまったく言い訳にならない。

安 倍や橋下は偽りの「ごめんなさい」で国民とアメリカや国際世論を騙しとおせると考えているのかも知れない。しかし、偽りの「ごめんなさい」を取り払ってみ れば、彼らの本心が慰安婦に人権なし、日本軍に悪いものはいない、日本と日本軍を悪く言うのは反日だというものしか残らない。女性たちの血の苦しみで自国 の利益をあがなったのは当然だという考えしかもっていないのは明らかだ。

 

 

 なぜか、橋下を庇い、小林によりそうのが秦郁彦である。


秦郁彦氏(現代史家)「強姦防止のため世界中に慰安所はできた

 

  第二次大戦当時、旧日本軍と同じような慰安所はドイツ軍にも設置され、お互い学んだわけもないのに驚くほど形態が似通っていた。韓国にも朝鮮戦争のとき に”テキサス村”と呼ばれる在韓米軍向けの慰安所があったことが韓国陸軍の戦史に記録されている。これは民間ではなく韓国政府が運営した慰安所だ。ベトナ ム戦争でも、米軍キャンプの周辺にはベトナム人売春婦を集めた「公認の軍用売春宿」が設置されていた。橋下市長の言う通り、世界中に慰安所はあったのだ。

 

  なぜ、慰安所は必要とされたのか。旧日本軍に慰安所が設置されたのは、上海事変の時が最初とされる。陸軍の軍法では略奪や暴行は禁止されていたが、日本兵 による略奪・強姦が頻発し、取締りを厳しくすると、犯行が見つからないよう女性を殺して処分するなどむしろ凶悪化したので、陸軍は頭を悩ませた。

 

  そこで、現地の業者に依頼してできたのが慰安所である。地元の村長なども良家の子女が襲われるのを防げるならと協力した。軍医が慰安婦の健康を管理するこ とで性病の蔓延を防ぐ目的もあった。世界中で慰安所や類似の施設が存在したのも同様の理由である。



(1) 日本軍が慰安所を作ったのは兵士たちに強姦をしないようにするためだった。それはいい。しかし、強姦阻止のためであるなら、なぜ強姦罪を単独で施行するよ う法改正をするのが有効だった。また、部下から強姦が出たら上官の昇進が遅れるという規則のため軍自身による強姦の摘発は出来なかった。ソ連軍はベルリン 入市後数日で強姦した兵を公開銃殺と決定、たちまち強姦数は激減した。

(2)慰安所は強姦をなくすためというよりは兵士に安上がりの娯楽を与えて、兵士のストレスや反抗を未然に防ぐ意味があったのである。日本軍 が強姦に頭を悩ました、というのは中国人が日本軍から離反して、占領軍政がうまくいかなくなるのを恐れたからであるが、中国市民の立場にたって強姦を減ら すことを真剣に考えたのではなかったのである。


(3) すでに徴発時に略奪と強姦の味を覚えた兵士は慰安所ができたあとも強姦をやめることはなかった。慰安所でのセックスが女性を完全にものとして、道具として 見る、人間性無視、中国人蔑視を教えるものだったからである。同時に戦争に敗れればこのように惨めに強姦被害に会う、それは必然だということを日本兵を中 心に国民に広げた。そのことから、満州においてソ連兵に慰安所を作る、敗戦後に米兵のための慰安所を作るという強迫観念にも似た慰安所有効論を導いた。

(4)現地の村長など「良家の子女が襲われるのを防げるならと協力した」などと村長が進んで協力したかのように言っているが、とんでもない。脅迫された村長と女性を供出させられた農民の苦しみを考えない、ひどい考えだ。

(5) 兵士に性病が蔓延して戦力が低下するのは各国共通の悩みであった。性病は兵士が性を求めることにより、共通して起こる事象ではあり、女性たちに対する検診 もまた共通の課題となるが、検診の実行によって売春宿が慰安所に変わったことはない。性病のコントロールと防諜の観点からは慰安所のシステムが最も運用が 容易だっただろうが、それでも旧連合国の各国軍は慰安所を作りはしなかった。