天に代わりて不義を討つ

歴史修正主義に反対します。難しいことをやさしく、わかっていると思うことを深く追求して書きます。議論を通じ、対話を通じて真実を求めます。

紙智子議員が安倍首相の「強制連行の資料なかった」発言を追求している。

 2007年の第一次安倍内閣は「政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」と閣議決定をした。

昨年11月7日、安倍は(首相就任前)、 米紙に慰安婦の強制連行を裏付ける資料はない」という意見広告に賛同者として名を連ねた。それには

日本軍によって女性たちが、自らの意思に反して売春を強制されたことをはっきりと示す歴史文書は、これまで歴史学者や調査機関によって1つも発見されていない。当時の政府や軍指導者からの戦時の命令を保管しているアジア歴史資料センターでのアーカイブ検索で、女性を強制的に拉致し慰安婦として働かされたことを示す文書は一つとしてないことが明らかになった

 とある。

歴史学者がそういう資料を1つも発見していないというのはウソだ。吉見義明教授、林博史教授、永井和教授らははっきり認めているし、秦郁彦教授の資料でさえも強制性を示す資料を発表している。「調査機関」がどういうものであるかは判然としない。しかし、そもそも河野談話を発表した宮沢内閣の調査会は自らの意思に反して売春を強要されたことを認めているのだが。 

平成13年1月31日本会議発言 では、

安倍首相「強制連行を示す証拠はなかったということです。つまり、人さらいのように、人の家に入っていってさらってきて、いわば慰安婦にしてしまったということは、それを示すものはなかつたということを明らかにしたわけであります」

普通、ひとさらいと言ったら人気のないところを狙って襲って脅したり、縛ったりしてこそっと連れていくというイメージだ。「人の家に入ってさらう」というと家人の抵抗を排してやらなくてはならないから、なかなかの荒仕事だ。強制の定義をここまで縮小するか、と苦笑する。
ところが、米紙での新聞広告では女性が「その意思に反して日本軍に売春を強要されていた」ということはない、と広い定義を採用した。つまり、騙して和やかに連れて行って、ついたらいきなり「売春」を強要されたということでもいいわけである。

アメリカ人に説明するときはアメリカ人の神経にさわらないよう、ほぼ完全否定してみせるが、日本ではひそかに定義を狭くする。これは慰安婦の内実がよく知られている日本ではウソを言えばすぐ足をすくわれるからである。

 

資料が発見されるかどうかはだれがどの部署に命じてどういう資料を探させたか、ということで違ってくる。

>「当時の政府や軍指導者からの戦時の命令を保管しているアジア歴史資料センターでのアーカイブ検索で」

というのは長い形容をつけて資料の捜索範囲を限定するつもりではないかと私は疑っている。
しかし、法務省から国立公文書館に移管された「A級極東国際軍事裁判記録」らは軍や官僚が強制的に連行した証拠書類が残されている。この文書はもちろん、アジア歴史資料センターでのアーカイブに存在する。

このことを、共産党・紙智子参院議員が明らかにした。その文書を紹介しよう。

紙智子議員「日本軍「慰安婦」問題の強制連行を示す文書に関する質問主意書」(参議院HP)より。

(読みやすくするために、書証番号は漢数字を半角アラビア数字に、書証のカタ仮名は平仮名に書き換えました) 

 

強制連行を示す文書は、書証番号353の「桂林市民控訴 其の1」、書証番号1725の「訊問調書」、書証番号1794の「日本陸軍注意の陳述書」である。

 

「桂林市民控訴 其の1」中国桂林での事案として「工場の設立を宣伝し四方より徐行を承知し、麗澤門外に連れ行き強迫して妓女として獣の如き軍隊の淫楽に供した」

 

書証番号1725の「訊問調書」、被害女性の証言として「私を他の六人の婦人や少女等と一緒に連れて収容所の外側にあった警察署に連れていった。(中略)私等を日本軍俘虜収容所事務所へつれていきました。此処で私等は三人の日本人に引渡されて三台の私有自動車で「マゲラン」へ輸送され、(中略)私等は再び日本人医師に依って健康診断を受けました。此回は少女等も含んで居ました。其処で私達は日本人向き娼楼に向けられるものであると聞かされました。(中略)私は一憲兵将校が入って来るまで反抗しました。其憲兵は私達は日本人を接待しなければにらない、何故かと云えば若し吾々が進んで応じないならばも居所が判っている吾々の夫が責任を問われると私に語りました」

書証番号1794は日本軍陸軍中尉の宣誓陳述書であるが、次の一問一答が記録されている。

問「或る小人は貴方が婦女達を強姦しその婦人達は兵営へ連れて行かれ日本人達の用に供されたと言ひましたがそれは本当ですか」

答「私は兵隊達の為に娼家を一軒設け私自身も之を利用しました」

問「婦女達はその娼家に行くことを快諾しましたか」

答「或者は快諾し或る者は快諾しませんでした」

問「幾人女がそこに居りましたか」

答「六人です」

問「その女たちの中幾人が娼家に入る様に強ひられましたか」

答「五人です」

(中略)

問「如何程の期間その女たちは娼家に入れられまていましたか」

答「八ヶ月間です」

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資料をたてにとった鋭い質問です。安倍首相がどのように答えるか注目です。