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天に代わりて不義を討つ

歴史修正主義に反対します。難しいことをやさしく、わかっていると思うことを深く追求して書きます。議論を通じ、対話を通じて真実を求めます。

ナイーブさんとの対話(2)

>軍が関与はしていますが。関与したということが「強制」したとは国語的に言えないのではないかと思います。 

 

軍というのは一応、慰安婦制度やその管理運営を決めた、軍の中枢のことです(これでいいですよね)。で、そういう軍の幹部は何も現場に行って慰安婦に日本刀を突きつけたり、脅したりするわけではないです。ただ、内地を遠く離れた占領地や戦地に日本軍部隊にいったん慰安婦として送り込まれた女性たちは性労働をしろ、と現地の将校に言われてなにか抵抗ができますか? 女性たちがなにか不満を持ったとして、それを言って行く先がありますか。そのように慰安婦の人権を守るような仕組みは外地にはいっさい存在しないのですよ。すべて男たち兵士の言うがままに性労働を提供するしかないではありませんか。それを強制と言わなかったら、なにが強制ですか。

 

 

>時代背景もあり、明治時代に弁護士団体が身売りを禁止するまでは、東北地方などでは子供を売り渡す人身売買が行われており、昭和に入っても、隣国の韓国では日本の一部であり、朝鮮人のブローカーによる売買であり、それを取り締まったという記述が、あります。

 

その通りで、日本も朝鮮も戦前には人権感覚が低く、人身売買によって女性が性労働を強要されることが一般的に行なわれていたのです。ただし、諸外国の批判もあり、日本政府は「婦人及児童の売買禁止に関する国際条約」を締結し、国内では人身売買に基づく性労働を禁止する民法を制定しています。

 

 

>吉見義明著「従軍慰安婦史料集」により慰安婦を斡旋する人々を軍が取り締まってという「強制」よりは程遠いと思える記述があります。 

 

ナイーブさんは「従軍慰安婦史料集」の本文を読んだのですか。そうではないでしょう。小林よしのりの解説を読んだだけでしょう?

史料集には「陸軍省副官通牒」と「内務省警保局長通達」という史料があり、小林よしのりが「悪い業者が慰安婦を集めるのを取り締まっていた」などと間違った解釈を広めています。

  

日中戦争が始まり、大量の日本兵を中国に送り込んだ結果、多数の慰安所が必要になりました(これは軍が必要と思ったということですよ)。軍は業者を選定して慰安婦募集を任せました。ところが業者は誘拐まがいの事件まで起こして内地の警察が業者を検挙するという事件がおこりました。

 

ここで問題はなぜ、問題を起こすような業者が出てきたか、ということです。当初の軍慰安婦は内地で公娼すなわち売春を行なっているひとに声をかけられました。しかし、戦地・占領地に行ってすさみきった兵士の性の求めに応ずるということはさすがに国内で売春に携わる女性たちも嫌がったのです。内地の公娼だけでは絶対的に数が足らないので素人を新たにリクルートするということが当然起こったのです。素人女性がそのような業務に応ずることはさらにハードルが高いことはいうまでもありません。正常な形での女性の自由意志による慰安婦への応募はほとんどありえません。これは自分の身内がそのような慰安婦に応募するということを想像すればだれでもわかることです。慰安婦を多数を集めるためには業者は違法・脱法によらなければほとんど目的を達成できなかったのです。

 警察の方では当初、軍が業者を通じてそんなにたくさんの慰安婦をかき集めていることは知りませんでした。業者を捕まえてみたら、軍の御用だというのでびっくりした様子が警察資料から伺えます。

 ここで、当時の警察と軍の力関係について解説します。当時は軍の横暴がまかり通るようになったことを表す、こういうエピソードがありました。ある陸軍兵士が公道上で交通違反を起こしたので、警官がこれを逮捕しました。ところが、陸軍はこれに激怒して警察の長官を呼びつけて、陸軍兵士は恐れ多くも天皇陛下の管轄にある。警官ごときがこれを逮捕するなど、越権行為だといって抗議したのです。この剣幕に恐れをなして、警察は陸軍兵士を釈放したのです。交通秩序の維持に関しては陸軍兵士であろうが、だれであろうが警察の指示に従うというのが当たり前のやり方ですが、当時は軍の横車がそこまで通っていたのです。

 

このような力関係にあったので、警察は軍にこのような事件があり、警察は治安を維持する我々は大変困っております、と下手に相談したと思われます。そこで、軍は業者に目立つことだけはしては絶対駄目だぞと言い含め、警察にはこれこれの業者は軍関係なのでよくよく注意しておけよ、ということになります。警察は本来の人民保護の業務をまっとうするのではなく、目こぼしをする約束をしたのです。それがこの二つの通達の意味です。

 

違法な募集が行なわれているだけなら、警察がバンバン取り締まり、警察が軍に対しておたくが選定した業者がこんな不埒なことをしていると、注意を喚起すればいいはずで、こんな資料が残るはずはないのです。

小林よしのりは「軍が違法業者を取り締まった」などと言っているようですが、人身売買をする違法業者を摘発するのは警察の管轄ですから、軍がが業者を取り締まることなどありえません。警察は本来違法な人身売買が行なわれていることを知りながら見て見ぬふりをする姿勢をいっそう強め、さらには従来の渡航規定の一部を棚上げして、軍に便宜を図ります。

 

人身売買に関する規定では売春を目的として海外に渡ることを禁止していました。ところが軍との談合の結果出された内務省警保局長通達では①売春を目的として、②満21歳以上で、③性病に罹っていないもので、④日本軍がいる華北・華中に行くものに限っては当分の間、黙認する、という方針を決めたのです。

 

女性を前借金で縛って内地から海外に送り出すことは、その女性が内地の売春婦であろうが、新たに海外で売春に従事することになった、現在は素人の女性であろうが、違法だったのです。また、21歳未満の場合は売春婦であっても本人が同意しても渡航してはならなかったのですが、これも目こぼしが行なわれることになりました。これは「婦人及児童の売買禁止に関する国際条約」を日本が結んでいたからです。